「自分をデフレ化しない方法」 文春新書
僕は今年に入ってから、デフレを何とかしましょう的なテーマの本や記事がよく目についてしまいます。
この本は、その中で手に取ったものです。
3/8の講演会で勝間和代さんを講師としてお呼びすることがなかったとしても、この本だけはこのタイミングで読んでるだろうな、と思います。
デフレについて書かれている本は多々ありますが、そのほとんどが一見難解でとっつきにくいです。たいてい偉い人や、偉そうな人が書いてるからね。
その中でもこの本は、圧倒的にわかりやすい!別に勝間さんが偉くない、とかそういうことを言ってるんじゃないですよ。たいてい偉そうで難解な文章を書く人は、そのわかりにくさで自分の文章の価値を底上げしようという意識が垣間見えて、読んでて「オマエは偉いかもしれないけどスゴくない。もっと普通の人にもわかりやすく書け!ホントにすごい人ほど、わかりやすく書けるもんだろ。」とか頭の中でツッコんでたりするんですが、まさに勝間さんスゲーな、っていうのが正直な感想です。
ちょっと長いですが、端的に面白かった部分を引用しますね。
「今、日本経済を病気にたとえると、ガン(デフレ)に罹っていると思ってください。このガンは気づかぬうちにいつのまにか進行していましたが、2009年、ステージ3となった段階でついに明らかになり大騒ぎとなりました。このままでは近い将来、患者は死に至るでしょう。ガンの症状は、日本社会全体のお金の量が減ってしまい、人々から希望と感謝の気持ちが失われるという形であらわれました。
 主治医である日本銀行は、ガン(デフレ)は自然治癒すべきだという考えに固執しています。日銀は最新の医学知識に精通しておらず、民間療法でもやって地道に免疫力を高めればそのうち治ると言っています。実は、主治医の関心は親戚が経営している薬局(天下りするための金融機関)の売上げにあるのです。だから、患者がガン(デフレ)の激しい痛みで苦しんでいるのに、世の中で行われている標準的な治療(お金を増やすこと)を敢えて行わずに、薬局が処方する効果の怪しい薬ばかり薦めているのです。
 しかし、このガン(デフレ)は、もはや自己の免疫力では治らないほど悪化しています。もうすぐステージ3から4に移行してしまいます。ステージ4になってしまったら、全身転移がはじまり、どんな抗ガン剤を打っても効かなくなってしまうでしょう。それほどまでに緊迫した状況にあります。
 一方、最新医学を学んだ専門医は、デフレ退治の抗ガン剤を打つべきだと主張しています。お金の量を増やす抗ガン剤を打つことで、患者に希望と感謝の気持ちを甦らせるべきだと言うのです。しかし主治医は抗ガン剤の副作用で、別の病気(ハイパーインフレ)になることを心配して、一向に治療を始めてくれません。
 医療の進んだ、イギリスをはじめとする欧米諸国では、すでに随分以前からこの新しい抗ガン剤(リフレ政策とかインフレターゲットとよばれます)の使用は許可されていて、患者に投与されてきちんと成果もあがっています。もちろんいかなる薬でも副作用はあります。しかし、この抗ガン剤はもしも副作用が出たらただちに止めれば、主治医が恐れる別の病気(ハイパーインフレ)などになることはありません。
 それよりもいまや瀕死の状態にある患者のガン(デフレ)を一日も早く退治することを優先すべきでしょう。別の病気(ハイパーインフレ)を避けられても、患者が死んでしまっては元も子もありません。もっとも主治医はそれでも治療は成功したと言うかもしれません。
 ただし抗ガン剤でガン(デフレ)を退治できても、患者が完全に健康をとりもどすわけではありません。免疫力を回復し基礎体力をつける必要があります。免疫力(再配分政策)については第五章でお話します。」
すごく痛快。
この論理に穴があるとか、そういう議論の余地が問題ではなく、シンプルかつ論理的に課題をとらえて、それを社会全体に共有してほしい、という気持ちがすごく出ている文章だと思います。こういうすごさは、偉い人にはなかなか出せない。反論されることとか誤解されることとか、そんなリスクを最小限にしようと思うほうが先にたつ人には、こんな思いっきりのいい文章を書くのはムリ!
時代が大きく変わるタイミングでは、シンプルかつ一貫性のある論理的な思考が大切になってくると、僕は思っていますので、こういうところは、すごく好き。
勝間流の考え方の一番の特徴は、このシンプルな論理性なのかもしれないなー、と思いました。
あ、そう考えると、勝間さんはそもそもこういう”時代の変わり目の危機意識”が最初にあって、デフレというキーワードを使ってこの本を仕立てたのかな、とも感じます。
女性論を切り口とした勝間流は、僕が好きじゃない日本的なちょっと前のスタイルのフェミニスト達の意識改革になればいいのに、なんて考えながら読んでしまって、それがまたひときわ面白いのですが、ひとたびデフレが切り口になると、ストレートにタマシイがグリップされる感じがして熱くなります。
同じ論理で書かれている本でも、何を題材とした切り口かで、こうも響きかたが違うのかと思うと、「誰に何を伝えるか」っていうことは、僕自身もっと深く掘っていくべき課題だな、と思いました。
さて僕らは、ゴルフ2を切り口にして、次の時代はどうあってほしいと提案していくべきか??

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