すみません、今日は少々カタクルシイお話をさせてください。
実はこの8月9月は店の経営的にかなり苦戦してまして、2ヶ月連続で結構な赤字をたたき出しております。
うちの店に来られるかたは、いつも繁盛してるのに?とか、これだけ仕事をいっぱい抱えているのに何で?と疑問に思われるかもしれませんが、うちの場合仕事の数をこなさないとなかなか黒字が出にくい価格設定なので、ちょっと仕事が滞留すると、あっという間に赤字になります。
振り返ってみると、この2ヶ月は、イレギュラーな症状で故障診断に時間がかかる車が多く、そこのロスを取り戻すことができませんでした。
整備工場という仕事の工賃は、一般的な工場と同じく一人当たりの時間工賃の設定が決まっていて、それを元にすべての工賃価格が決まります。この部品の交換をすると標準時間がこれくらいなのでいくら、という交換工賃と、故障診断にかかった時間がこれくらいなのでいくら、という診断工賃という形で請求書に乗っかってくるので、みなさんも目にしたことがあると思います。
そもそも僕が最初にゴルフ2で車屋をやりたい、と思うようになったきっかけの一つにこの故障診断の工賃という存在があり、「スパッと一発で原因がわかれば安く上がって、なかなか原因がわからなければめちゃくちゃ高くとられる。知識や技術が足りなかったり自分の見立てが遅かったりダラダラやってるのを棚に上げてお客さんに全部請求するのって理不尽じゃねーの?」なんて、若かりし当時は思っていました。
なので、「故障診断にかかるコストは、お客さんからもらわないようにやりたい」と考え、これまでずっと、基本的に診断工賃はいただかずにやってきました。
これも開業当初から5、6年の間は、中古車の販売がメインの仕事だったので、店舗の基本コストは中古車販売の粗利でまかなう考え方で、整備の工賃は単純にメカの給料分だけ出ればいい、と思っていました。
ですがこの5年ほどで整備の仕事が増えていくにつれ、メインの仕事は販売から整備へと移り、現在ではゴルフ2の台数が減らなければ整備の仕事はなくならないから、ゴルフ2に乗りたいという人をサポートしてゴルフ2のシーンを盛り上げよう、という意味で中古車販売を続けているような考え方になっています。
そうなってくると、以前は中古車屋として店舗コストを計算していたのに対し、整備工場として店舗コストをまかなう考え方が必要になってきました。整備工場として安定した経営をするには、安定した工賃収益が重要で、ここにきてやっと今さらですが、僕自身が、なぜディーラーさんや一般の整備工場さんには診断工賃という仕組みがあるのか、ということを理解できてきました(苦笑)。だからといって、単に診断工賃を普通にいただくのは、僕も妙なプライドが邪魔して絶対にイヤだ、という思いもあり。。
またその一方で、開業当初は単純だった故障診断も、ここ1~2年はすごく手間のかかる車が入庫してくるようになり、「ゴルフ2も旧車になってきたんだなぁ」と感慨深くなる一方で、故障診断の時間をどうやってとるかは重い課題になってきました。10年前は人も少なかったし迷宮入りする故障診断もめったに出なかったので、故障診断の時間で出るロスは、コイピーと二人で多少無理したり徹夜すれば大丈夫、くらいに勢いで軽く考えていましたが、現在の人の多さ、仕事量、そして難しい故障診断の車を常時複数台抱えている状況に対して、以前のやり方では通用するはずもなく、解決する方法を見つけることができずにいました。
単にその時間分の赤字が出てしまうというだけではなく、納車整備や車検など、すでにお代をいただいてしまっている整備がどうしても優先になってしまうため、終了予定が読みづらいイレギュラー故障診断の車は、なかなか手をつけられず後へ後へ回されてしまう、ということもなんとかしたいですし。。
かといって、他でいろいろ整備に出しても治らないからここに来ました、という車を無料で故障診断している間、いつも当店でメンテをすべて任せてくださっている車の修理をあずかったまま手をつけずにお待たせしてしまう、という状況も筋が違う、と思ってしまいます。
そんな中で今期は、それまでに比べて業績の浮き沈みが激しく、「この、うまくいってるのに利益が出ない状況をなんとかしたい。このままでは長く続けられない」という気持ちが強くなり、気心の知れた常連さんにはそれとなく相談してみたりしていました。
その常連さんたちからはいろいろ示唆に富んだご意見をいただいていて、
「そもそも専門店なのに薄利多売のビジネスモデルを使ってるんだから、アイドルタイムは致命的でしょ。これだけ人がたくさんいるんだから、それぞれがきちんと生産性のある仕事をしていないと。」
「回転率重視でいくなら、何が原因で滞留しているのか、ヒト・モノ・カネのどこから手をつけるのか考えたらいいよ。」
「前々から思っていたんですけど、10年前と同じ価格設定で整備していこう、ということに無理がある。僕らは田中さんが思っている以上に、今後維持に手間もお金もかかっていくことに対して覚悟はできてますよ。」
「今このスタイルで利益を上げて今のうちに資金をためて、大きなところに移転するか田舎に土地を買って工場を建てるかしないと、先細る市場の中でレストア屋の方向へ向かいながら生き残るのは難しいと思いますよ。」
中でもこういう言葉が、とても僕のココロに突き刺さりました。
そんなことを意識しながらボーッとしていたら、先日ふと、
「何も交換工賃と診断工賃の時間工賃が一緒でなくても良いのではないか」
「うちで突っ張っている、こだわっている部分と、お客さんとの温度差を埋めよう」
と気がつきまして、スピニング流の診断工賃制を導入することを思いつきました。
1.診断工賃が発生する場合
通常の故障診断につきましては、今まで通り工賃は発生しません。
大体この症状だと、8割がたここで治る、という箇所がありまして、それでもダメならここで残りの5割、それでもダメならここ、という通常の整備の流れが当店のデータであるのですが、そういうこれまでの症例データと、自動車整備の基本とで考えても解決しないケースにつきましては、そこから先にかかる診断時間分を、診断工賃としていただくようにします。(なので、診断工賃が発生するケースは、全体の数パーセントにとどまる見込みです)
2.診断工賃の価格について
診断工賃の設定は、当店メカの平均のお給料から、労働分配率で割り返して計算した、「その人一人が一時間動いて、店の損益に対して赤字にも黒字にもならない金額」の、一時間あたり3000円とさせていただきます。
いただいた診断工賃は、あくまで診断時間分の当店の経費をまかなうためのもので、そこから利益はいただきません。
3.診断工賃が発生した作業について
診断工賃が発生した事例については店内でレポートという形で共有しまして、今後同様の事例が散見されるようになったら、その際には診断工賃を発生させなくても修理できるようになることを目指します。
こうしたコンセプトで導入させていただきたいな、と思い、この1~2週間で試験的に一部のお客様に適用させていただくお話をしてご意見を伺っていますが、良い反響をいただいております。診断工賃が発生するかたにつきましては、ゴルフ2乗りみんなが将来にわたって安心して乗り続けるための、日本のゴルフ2シーンに対する投資だ、と思ってご理解をいただけると、甚幸ですm(_ _)m
引き続きご意見くださるかたがいらっしゃいましたら、こっそり田中までお願いします。

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