崇高な理念をカタチに変える

今回のゲストは、東京、日野市の市議会議員を務める「菅原直志」さん。
彼の政策ポリシーや、過去の具体的な実績は ホームページを参照いただきたい。
ゴルファーズ・ダイジェストでは、彼の価値観や、ライフスタイルをベースに、「菅原直志」の真の魅力に迫ってみたい。

「おじゃましま~す。 おお、すごく素敵なお宅ですね。なんていうか、初めて伺ったのに、どこか懐かしいというか、すごくホッとできる空間で……」

「いや、ありがとうございます」

「家具も素敵ですね!人の温かみが感じられて。時計とか、テーブルとか、アンティークがお好きなんですか?」

「そうですね。特別のこだわりがあるという訳ではありませんが、古いモノには心惹かれることが多いですね。そういう意味では、吊しの状態は、実はあまり好きではなくて、どんなものでもちょっと手を加えてあげる、ひと手間かけてやることで一層の愛着が湧くと思います」

「なるほど。それは同感です」

「例えば、このテーブルやイスも、ずっと使い続けているモノですが、自分で色を塗って使うことで楽しみが広がっています。古いモノを工夫して使う、自分にとってはそれ自体がとても愉快なことですね」

「それは、愛車のゴルフⅡについても共通していそうですが!?」

「そうかもしれません」

「古いモノを愛着を持って使うという楽しみはよく理解できるし、共感が持てます。 でも、古い道具は、不便なところも多いと思いますが……」

「確かに、不便だったりするかもしれません。 でも、私はさして気にならないし、生活全体から見ると大した不快さじゃあない」

「なぜ、ゴルフのⅡを選択されたんですか?」

「Ⅱは学生時代に全盛だったクルマで、当時から憧れをもっていました。 たまたま、中古車屋さんで白のⅡを見つけて購入したんですが、実はこのクルマがかなり壊れました」

「Ⅱは、個人的にネオオールドの輸入車としては剛健な作りだと思いますが、乗りっぱなしのクルマだとそういうこともあるかも知れませんね」

「水が漏れたり、止まってしまったり……。それで、ネットでスピニングガレージを発見してメンテナンスをしてもらいました。 結局、その白いⅡには2年くらいしか乗らず、今はスピニングガレージで購入した2台目のⅡに乗っています」

「2台目のⅡ!! よほど気に入ったクルマだということですか? 」

「なんだか、自分と波長が合うというか……。どこがといわれると困ってしまうんですが、独特のエンジン音なんかは気に入っています。特別な思い入れがあるといよりは、至って普通に乗っている感じかなぁ。仕事でも、プライベートで家族と一緒でも乗ってますし」

「2台も乗り継いでいる割には、淡泊なご回答で。 本音と建て前? 実際のところは、どうなんですか?」

「う~ん、実は、ゴルフの前に何に乗っていたかというと、ごくごく普通の国産車に乗っていたわけですよ。 でも、そのクルマ達の車種とか、どこで買ったのだとか、そういうことってまったく記憶に無い。 クルマはツールであって、愛情を注ぐ対象ではなかったんですね。 そういう意味では、ゴルフは自分にとって特別なクルマであるわけです」

「愛情を持つに値すると? 」

「そうですね。 直して直して30万kmまで乗れたらいいな、そんな風に思っています。 自分にとって最後のガソリン車にしたい。世の中が電気自動車にシフトするまで乗っていたいと思わせるところがあるわけですよ。これは、今までクルマを道具として使ってきた自分にとってはすごい変化なわけです。話は戻りますが、古いものを直しながら使うのは、喜びでもあると同時に、エコだとも思っています」

吉村先生が、駐車場から出してきたクルマは、フォルクスワーゲンのゴルフだった。それも、最新のものではなく、かなり古いゴルフだ。吉村先生に伺ったところ、第2世代目のゴルフで、ゴルフⅡというのだそうだ。助手席にほんの10分程乗せてもらっただけなのだが、俺にとってその僅かな時間はカルチャーショックを受けるのに十分すぎる程の時間だった。
自慢じゃないが、俺のクルマはターボのブースト圧も上げてあるし、車高も限界まで下げている。だから当然、加速は良いし、コーナリングもバツグンだ。おまけにFRだから、テールのスライド量をアクセリングでコントロールすることだって可能だ。こんな素晴らしいクルマはない! そう思っていた。

だけれども、それは自分が井の中の蛙だっただけであって、世の中にはもっと別の次元で素晴らしいクルマがあるんだということを身をもって知らされた気分だった。ゴルフⅡは、エンジンの吹け上がりにドラマティックな刺激があるわけでもないし、乗り心地がシルキーと呼べるほどスムーズな訳でもなく、コーナリングがクイックな感じでもない。突出して、ある点だけが素晴らしいというクルマではないと思った。 だが、乗っていて大地にしっかりと根を張り巡らせた大木のような、ドッシリとした安定感がある。いってみれば、重厚感ってやつだ。だが、重厚でありながら、交差点や曲がり角では、実にキビキビとした身のこなしを感じさせる。それに比べると、俺の愛車はクイックに曲がってドカンと加速はするが、すべてにおいて軽薄というか、薄っぺらいというか、身が詰まっていない感覚だ。ゴルフⅡは古いクルマながら、ボディの剛性感もすこぶる高く、堅いシェルに守られているという安心感が常にある。おまけに、お世辞にも吹けが鋭いとは言えないエンジンも、低回転からグッと力強いトルクを生み出しているし、キンキンという金属音のような独特のエンジンサウンドと、エンジンが放つビートは乗っていて非常に心地よい。車高が低いわけでもないのに安定した走行感覚も独特のもので、そのフラットライドな乗り心地に、思わずため息を漏らしたほどだ。

その日を境に、俺はゴルフⅡのことを調べまくった。古い雑誌を買いあさっては、ゴルフⅡの記事を読みあさり、その素性の確かさを改めて確認した。どの記事を見ても、ゴルフⅡは名車だと書いてある。帰省した折に、クルマ好きの親父に聞いてみても、アレは名車だという。最新の雑誌でも、歴代ゴルフの中で、とくにⅡは優れていると謳っており、やはり名車だと締めくくられている。そしてなにより、様々な自動車メーカーとクルマの研究開発を共にしている吉村先生が自ら選らんだクルマだ。これは、紛う事なき名車中の名車だと判断した。そして、その頃にはすっかりゴルフⅡにぞっこんに惚れ込んでしまっていた。

「市議として、足にゴルフを使うというのは、周囲の反応はどうなんですか?」

「正直、あたたかな受け入れ方ではないかもしれない……。でも、外車だという特別視はほとんどありません。それよりは『壊れるんじゃないか?』と言われることの方が多いかも知れない。でも、他人からどう思われようとも、自分にとっては大切な仕事のパートナーであることに変わりはないです」

「達観していらっしゃるというか、物事の本質を見抜いているというか……。でも、菅原さん自身の価値観がしっかりとしたベースのうえにあって、それがまったくブレない。 軸足が常に安定している。そんな印象を持ちました。 これは、菅原さんのモノに対する考え方というだけではなくて、生活そのもの、もっといえば己の行動基準となっていると思うのですが、仕事面においてはどうですか?」

「そうですね。お陰様で今期で4期目、15年間市議をやらさせていただいてますが、1期目と今とで大きく変わったところというのはとくにありませんね。常に、判断基準は自分の中にあって、それを元に行動する訳です。これがもし逆に、自分の外、つまり市民の側に行動基準を置いた場合、その時その時の社会情勢に連動して自分の主義主張がコロコロと変わってしまう。」

「票を入れる方としては、時代のニーズをくんでいるように感じますが、きっとそれでは長くは議員生活が続けられないでしょうね」

「言うだけ、提案するだけなら簡単です。その時々の目前に迫った問題も、当然疎かにはにはできません。だけど、コンビニエンスなフレーズを掲げたとしても、結果を出さなければ意味がない。票を得るためだけの主張は、私はしません」

「そこが長く市民の方の支持を集めているポイントでしょうね」

「結果的に市民の皆様が何を基準に支持してくれているのか?いうことはわかりませんが、自分は政策だとか、目標という点においては大きくは変えていない。 コンビニエンスな対応を何故自分がしないのかというと、現実社会では5年前の声や鬱憤が今になって出てくるものなのです。都合よく政策を変えていたのでは、抜本的な問題解決はできません。真摯にある問題と対峙し、解決の糸口を見つけそれを解きほどいていくためには、長い時間と労力が不可欠です。だからこそ、自分は自分の信じたことを実行するだけです。立候補当初からキャッチフレーズを変えていないのも、変える必要性を感じないのと、自分がやるべきことが変わっていないから」

「自分に課せられた使命があるということですね!?菅原さんは、何故議員になろうと思ったんですか?」

「僕は7才の時に交通事故で父親を亡くしました。でも、あしなが奨学金で高校、大学を卒業することができました。その後、サラリーマンをしていましたが、あしながのトップの方から議員になれと言われ、そもそものキッカケはそこにあります。実際に議員として活動してみるにつれ、これは天職だと思うようになったんです。キャッチフレーズである『あしながさんの愛を政治に』と『世直し無駄なし菅原直志』もそこに根差しています」

「菅原さんが目標とする、いや、実現しようとしている社会とはどんな姿のものですか?」

「最終的には、人々に優しい社会になって欲しいと思っています。役所と市民が隣同士に座っているような社会。それが目標です。例えば、公園で子供が転んだとします。当然、子供は痛がります。 そんな時、一緒にベンチに座って痛みが治まるまで、もう一度元気に公園の中で遊べるようになるまで、隣に座って待ってあげる。そんな優しさが大切だと考えています。 時間とお金がないから、今までは役所は待ってあげられなかった。 だけど、やろうという意志さえあれば、痛みを抱える市民に付き添っていてあげることは可能です。 そういう社会を作りたい訳です」

「市議会議員としての菅原直志のベースは優しさ=愛にあると。 では、具体的に大切にしていること、ものはなんですか? 」

「今、一番意識しているのは『つながり』ですね。 結局のところ、我々市議には任期があって、その度に当選と落選という明確な勝負をしているわけです。 そうして、選ばれて仕事をしているわけですが、我々の仕事は商売ではない。 例え落選したとしても、人との『つながり』や、『優しさ』は残ると思います。 僕の場合、利害関係を元に支持してもらっている団体はありませんし、集会もやったことがありません。 10数年、駅に立って演説もしていないし、事前ポスターも貼っていない。 これをやりたい! というアピールはしますが、自分の広報活動はほとんどしていないに等しい。 でも、本当に『つながって』いなければならない人達とはシッカリと『つながって』います。 人との『つながり』っていうのは、お互いに認め合えるか否か、そこが重要です。 自分と他人の違う部分をクローズアップするのか、それとも一致する部分をクローズアップするのか、その二択です。 相手と(主張や意見や価値観が)一致する部分を共有する。 そして尊重し合う。 一致する部分を探すことで物事が前進していくわけです。 でも、実際はその一致する部分を探すのが大変なんですけどね。 余談ですが、ゴルフには明確な自己主張が感じられて、そこに自分と一致する部分が多いから不満を感じないんでしょうね」

「人と人の『つながり』が社会を動かすほどの大きな力となるわけですね。 」

「そうそう。 みんなで仲間になって一緒に力を合わせて変えていく、その方が当然結果はついてくるわけ。 僕の仕事は、あくまでベンチの隣で待っていてあげることなんです。 つまり、言い換えれば、信じてあげること。 議会には決定権はあるけど、執行権はないんです。 だから、実際に動く人々がやりやすい環境や空気を整えてあげる、方向付けてあげる、それが重要だとも思っています。 あとは、僕が変えるのではなく、その人自身が変われる力をもっているのだから、それを信じる。 信じてあげるということが、結果的にその人のポテンシャルを引き出すことになるわけです」

「言葉では簡単に聞こえますが、実際にそれを行動するとなると、相当難しそうですが……」

「まず、なによりも人のそばにいることに努力をしています。 今日会いたいという人がいれば、極力今日中に会いに行く。 この時気をつけていることは、自分のところに相手を呼ぶのではなく、自分が相手のところに行くということです。 僕のところに呼んだのでは、相手が心を開きづらいだろうし、僕の性格からしても、手間ひまをかけないと自分が本気になれないということもあります。 そして、相手にも熱意が伝わりやすい。 そのためにチョイ乗りを繰り返すので、クルマが傷んでいくんですけどね……」

「そこまでしていると、かなりお忙しいのではないですか? 人々のために自分の貴重な時間を費やすということは、素晴らしいことだと思いますが」

「僕の今の目標は、週に2日休みをとるということです。 他の議員と比べて、自分では忙しくないと思ってますよ。 ひとつひとつの事柄、案件に時間をかけて取り組んではいますが、基本的にマイペースで仕事をしています。 そもそも、今の世の中は効率を最優先するばかりに動きが早く、忙しさに価値観を見いだしているところも多いと思う。 煮物を作るときに、グツグツと煮続けるよりも、冷まして寝かせる間に味が染みこむのと同様に、人は忙しくしているときもそれなりに成長するけれども、何もしないときの方が成長すると思う。 二十歳のとき、ブラジルのアマゾンの奥地に1年ほどいたんですけど、そこは3 ヶ月で20~30人くらいのブラジル人としか接点がないんですよ。 そんなところにいると、実に様々なことを深く考えました。 現代社会も、2割くらいスピードダウンした方が良いんじゃないか、そう思いますね。 きっと効率は変わらないと思います。 熱心に仕事に打ち込むことは確かに重要ですけど、もっと時間を有意義に大切に使うことに価値を見いだした方がいいと思います」

「確かに日本人は働き過ぎかもしれませんね。 忙しいことに価値を見いだすことが、正しいのか? というテーゼにはドキッとしました。 一時期スローライフという言葉が流行りましたが、スローワークという考え方もありなんですね。 それは、ゆっくりと時間をかけて丁寧にやるという意味で」

「僕の仕事は、概ねそんな感じで進めています。 時間は貴重ですけど、使い方でその価値はさらに上がりますから。 最近では、広報活動も多いですね。 自分のではなく、仲間のですけど。 友人の応援は積極的にやっています。 僕のように無所属でやっている人間の場合、口コミは非常に大切ですから。 相手を応援するということは、相手に自分を知ってもらうことでもあるから、これは重要です。 その他にも、国会議員の内閣質問も作っていますし、広報もしています。 その結果、犯罪被害者のための条例を作ることができましたし、自殺に関する条例も新たにスタートします」

「いや、手広くご活躍されてますね。 ホントに週に2日の休みがとれるんですか? でも、自分の価値観という物差しで世の中を観察して、それをベースに行動されているのがよくわかりました。 行動基準が自分側にあるということは、非常に重要ですね」

「ええ。 人々の声に耳を傾けるということは、非常に重要ですが、行動の基準は常に自分の中に持っています。 だから、行動が大きく変わるということはありません。 だけど、常に変わり続けてはいます。 これは、矛盾しているようですが、考えや価値観は大きく変えずに、行動のパターンを洗練させているといった感じでしょうか。 まあ、言ってみれば、進歩とか改善とかいった類のものですかね。 その例として、前回の成功体験は次回には用いません。 マイナーチェンジはするけど、フルモデルチェンジはしない、そんなところでしょうか。 そうやって、少しずつ、物事を前に進めていくわけですね」

菅原直志の政治論は、我々に実に多くのことを教えてくれている。 これは、なにも政治に限ったメソッドではない。 ボクらの生き方について、大いなる疑問を投げかけているのだ。 『隣人を愛しなさい』といったキリストの言葉を、政治の世界で実戦している菅原先生。 1年の内、300日以上はデニムを穿いて、私服で働いているという。 気取ったところや、偉そうなところは微塵もなく、気さくで温厚。 でも、芯はしっかりと通っており、志は高い。 強い自分を持っている。 エンジニアが良いと信じたことを、そのままカタチにすることができたからこそ、未だに名車として君臨するゴルフⅡ。 Ⅱに菅原先生が共感を覚えるのは、根底に流れている思想が同じだからだと思う。 でも、先生はそのことに気づいていないというところがまた、なんともおもしろいではないか。
皆さん、どう思います?

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