当店常連さんの野澤さんの紹介で、CLiのMT車でゴルフ2オーナーの仲間入りしてくれた金子和磨さん。 その金子さんが最近開業された病院に、早速おじゃましてみました。 単に僕がすごく行きたくて、お話したかったんですけど(笑)。 近いニオイを感じる人は、仕事のコンセプトや人生のコアになる価値観も共感度が高い!おそらくこのページを見ているみなさん一人ひとりにも、深いところで共感度の高い話になりそうな予感。 (田中 延和)

T 田中 延和(スピニングガレージ)
K 金子 和磨(精神科医・和クリニック医院長 kazu-clinic.jp)


■K あっ、お花ありがとうございました。 

■T  いえいえ。 

■K 普通ないですよね。 病院の開業祝いに車屋さんからお花頂くというのは。 (笑)

■T  たしかにそうですよね。 (笑)どんな病院になるのかなって気になってて。 まず、室内が明るいですね。 病院っていうと、どうしても外の光があまり入らないイメージがあったんで。 日当たりの良さも、ここを選んだ要因の一つだったんですか?

■K ええ。 建物が線路沿いで遮る物がないので、それなら自然光を活かして明るい空間にしたかったので、そこを野沢さんにお話してデザインしてもらったんですよ。 

■T  やっぱり光が溢れててまた来たくなる空間だったら、患者さんもそれだけで気持ちが楽になりますよね。 

■K 開業して間もないですけど、すごくリラックスできる感じが良いなって言ってくださる方もいて、それはすごく嬉しいですね。 

■T  やっぱり精神的に落ち着けるかどうかって、物凄く重要ですよね。 

■K そうですね。 暗い所で仕事してると、こっちの気持ちも滅入ってきちゃうんで。 

■T  そういえば、正月に持病の腰痛が悪化しちゃって。 それで、いつもお願いしてる方に診てもらったんですけど。 その時に、「ネガティブすぎ。」って言われちゃって。 身体がどうこうとかじゃなくて、これはメンタルの問題だよって。 (笑)

■K (笑)でも、根本的にメンタルが強い人っていないと思うんですよね。 それぞれが、なにかしらでカバーしているんだろうけど、それが仕事とか対人関係とかなんらかの過度なストレスでバランスが崩れたときに、もともと潜んでるネガティブな部分が顔を出しちゃうようなイメージですよね。 

■T  僕もそういう波があるのは、自分でも理解はしているんですけど。 きっと誰でも悩んだり落ち込む事はあるし、そこでそれぞれ立ち直って生活していると思うんですよ。 でも、どうしても辛くて病院に行くと、「あなたは鬱です。」と診断された瞬間に一線引かれて遠い所に行ってしまう感じがして、その境目がいろいろとわからないなって最近思いますね。 

■K ええ。 その線引きってのは本当に難しくて。 ある患者さんが来院されて、「落ち込みました。 辛いです。 なにもやる気が出ません。」と。 それは、言ってしまうと鬱病の症状に当てはまるんですよ。 だから、そこは難しいところではあるんですけど、じゃあ「鬱ですからお薬処方しましょうね。」っていうのは私も違うと思うんです。 だから、まずは患者さんとじっくり話をしてみる。 悩みを聞いてみたり、それこそ、その人の育ってきた環境だったり、人生観だったり仕事に対するスタンスを聞きながら、その中で原因を探していって、それを見付けたらアドバイスをしてみる。 それで比較的症状が和らぐ人もいますしね。 安易に薬を出すのではなく、しっかりと患者さんと対話してみて診断する。 ただ、患者さんの中にはもうこの人限界だなって方もいるんでなかなか難しいですね。 

■T  自分で頑張れるうちは自分でなんとかしようって思っちゃいますもんね。 

■K ええ。 頑張りすぎちゃうんですよ。 

■T  本当は気軽に受けられるそういうサービスを手前に用意してあげるのはきっと大事なんですよね。 

■K 「ちょっと最近元気ないから、入ってみようかな。」その位の気持ちで、気楽に来て貰ってけっこうなんですよね。 私達も決して「あなたは病気だよ。」って言うのが仕事ではなく、むしろその病気を未然に防ぐアイデアやアドバイスそれに安心感。 そいうところを提供していければなって思いますね。 

■T  ああ、それは素敵ですね。 

■K 私の基本スタイルとして、自転車で往診してるような、昔の町医者のイメージがもともとあって。 もっと患者さんと近い存在で在りたいと思うんですよね。 身体の疾患で調子悪いのに鬱だと思って来られる方も、中にはいらっしゃるんですけど。 田中さんには、前にお話しましたけど、私もともとが心臓外科医なので、その辺りもある程度幅広く診れますので、本当気軽に来て貰いたいですね。 

■T  ここ最近、鬱とかそういう精神疾患の人って増えていると思うんですけど。 

■K たしかにここ十年二十年で、鬱の方って増えているのも事実で、もともとはこんなにいなかったと思うんですよね。 

■T  その原因っていうのは、なにかこれが原因ですってものがあるんですか?

■K これが原因ですって一概に言うのは難しいんですけど。 その一つとして、最近は一人で抱え込む人が多いと思うんですよね。 昔と比べても、一人の時間って多くなっていると思うし、ケータイやネットの普及により一時的な孤独感からは、開放されているんでしょうけど、本当に自分が辛い時に相談したり頼れる相手って実際少ないと思うんですよね。 

■T  たしかに昔と比べてコミュニケーションの取り方も多様化されてますけど、実際会って顔と顔を合わせて少し話をしてみてれば、今相手がどんな心理状況なのかとかも、気付いたり解ったりしますもんね。 

■K そうですね。 それって核家族化が進んだのも大きくて、昔って学校から家に帰れば誰かしら居て、「おかえり。」って言ってくれてたと思うんですよね。 朝ご飯や晩ご飯は、みんなで食べるとかって、わりかし普通の光景だったと思うんですよ。 

■T  サザエさんみたいな、ああいう古き良き日本的な家族の風景って、今は少ないのかもしれないですね。 

■K 家族の団欒とか、御近所さんとの交流も減っていると思うし、それこそ競争社会で一人で頑張らなくちゃ、成果を出さなきゃとか、どんどん深い方に行ってしまうと思うんですよ。 その前に誰かが、「そんなに頑張らなくても大丈夫だよ。」って言ってあげれればいいんでしょうけどね。 

■T  変に社会が欧米化していった弊害がそういうところにも表れているんでしょうね。 

■K まあ、この国の社会としていくつか転機があったとは思うんです。 村社会がアメリカ型の個人社会にかわってきて、バブルが弾けて、最近では、3・11の震災ですよね。 まあ、細かい事を言うともっとあるんでしょうけど。 

■T  その3つで共通するのは、個人が社会に対して抱いていた安心感が崩れる瞬間ですよね。 

■K 昔だったら一流企業に入社して働いてマイホーム建てて、退職金貰ってハッピーだった時代なんですけど、今はもう終身雇用なんてほとんど信用できないですし、年金なんかもすでにいくらもらえるかわからないような時代で。 なんていうか、安心出来ない社会になってますからね。 

■T  同じように生きてて、同じように生活してるのに、それがすごくハッピーだと感じる人と、それがすごく不安だと感じる人がいて、どっちにも根拠ってそんなにないんですよね。 考えてもしょうがないような事を心配しながら生きているのか、なにも考えずに安心して生きられるのかで、すごい違いが出てしまう。 その3つの転機はそんな事をさしている気がします。 

■K 安心感っていうのはとても大事ですから。 だから、誰かがいるっていうだけで心の拠り所じゃないですけど、少しの語らいがその人の安らぎに繋がると思うんですよね。

■T  僕はずっと町田が地元でここの中途半端な田舎具合も好きなんですけど。 

■K 私がクリニックをこの場所に決めたのも、やっぱり一番にはこの土地が好きだからなんですよね。 町田に住んで13年になるんですけど、もうずっとここに住むんだろうなって思っていて。 町田のこの辺りって適度に自然もあるし、住んでる人もけっこう多岐にわたっていて、なんかいろんな生き方がある街で非常に好きなんですよね。 

■T  僕もずっと町田なんだろうなって思っていたんですけど、まあ今回店の引っ越しで相模原になってしまうんですけど、でも町田と相模原は文化圏的にはセットなんで、全然外に出るって感じはしないんですけど。 ちょっと田舎の方に行くかなぐらいで。 

■K けっこうバイクで道志とか行くときにあの辺の道抜けるじゃないですか。 ああ、あそこに行くんだなって。 場所的にも羨ましいかもって。 (笑)

■T  (笑)宮ヶ瀬ダムの外周道路まで本当一分位なんで。 

■K あのライダーのたまり場みたいになってるあの例の。 

■T  あの道の駅までは5分位で行けます。 なので車もバイクも自転車もすごく楽しい所ですね。 

■K 田中さんとはけっこうそういった趣味も共通しちゃってて。 (笑)

■T  (笑)自転車だったりバイクだったり、かぶってますからね。 

■K かぶってますよね。 

■T  そういう趣味が、かぶってるお客さん達が多いってのは面白いんですよね。 なんかその面白さをいろんな形で、伝えたいと思っていて。 その一環でこの対談もあるんですけど。 (笑)

■K 本当、いろんな人のネットワークってすごく面白いなって最近感じて。 この病院にしても、そのゴルフ2乗りの野沢さんにここの空間プロディユースをして頂いて、設計士さんとも数々の試行錯誤の結果ようやくこの空間が出来上がったっていうのはありますし、それこそ私は建築にしても、家具にしても結局素人なわけですよ。 だから野沢さんや、設計事務所の方達と一緒に椅子選びなんかもショールームを何軒も回って選んだんですよ。 ここの植物も近所の植栽屋さんに行って選んだり。 けっこう細かい、だけど、一つ一つリラックスできるものが重なっていくと、なんか面白い空間できるなって勉強になりましたよね。 

■T  何を考えてその形になっていくのかって、全部が整合性があるとすごく良い空間になるんですよね。 素人の人だと、その人らしさとか自分らしさって、意外に解らなかったりするんですよね。 

■K そうですね。 

■T  僕も今回自分の店の引っ越しで、この土地をどういう風にしたらうちの店らしくなるんだろうっていうのが中々解らないんですよね。 僕が工事屋さんに言っても、工事屋さんも”うちの店らしい”は解んないんで。 結局よく解らないものを、お互い探り合ってるみたいになるんですけど。 そこで野沢さんみたいに両方知ってる人がクッションになってくれると、通訳になるんですよね。 そこがすごくストレスがない。 「そこなんだよ!」みたいな感じで。 

■K 「そこなんだ」、って。 (笑)

■T  それだ!それそれ、それがやりたいんだ!みたいな。 (笑)

■K ありますよね。 あの、最初にスピニングさんに御邪魔した時に、本当説明が丁寧で下回りも全部リフトアップして見せて貰ったじゃないですか。 実際にメカの方と一緒に見ながらアドバイスして貰って、それも踏まえ整備コースから選ぶ。 こちらとしても、コースで選べるというのは経済的な安心感もあるし、ネーミングもシャケ弁とか幕の内とか面白いですよね。 ただ、そこをマッチングさせる説明ってのは、実は簡単なようで凄く難しいんじゃないかって私は思っていて。 車って、どうしても故障するのはリスクとしてあるわけですから、だからその車の弱点をちゃんと理解して、そこを今治すのか、まだ先でいいのかとか、一つの物事に対して共通認識できるって大事なんですよね。 

■T  ああ。 すごく嬉しい。 なんかその辺が車に関しても車以外のものに関しても、わざわざゴルフ2乗ってるみたいな感じで繋がってるので、それ以外のことに関しても通訳なしで共感できるものが増えてればいろいろ面白いかなって思うんですよね。 日常生活もストレスないでしょうし。 

■K だから趣味とかそういうネットワークを通じてお互い刺激になったり、理解しあったりしながら上手く補えていけたら面白いですよね。 

■T  ゴルフ2好きの人達って面白くて共感できる人が多いんで、最近はそういう繋がりが持ててその中で仕事が出来る環境のためにゴルフ2専門っていうものがあるんじゃないかなって思う様になってきてて。 ゴルフ2が好きっていう人のバーチャルな仮想村じゃないですけど、将来的にはそういうコミュニティーの中の萬屋っぽい位置付けでうちがいけたらいいなって思っていて。 その延長上でニローネに行こうかなってもあったんですけど。 (笑)

■K ああ。 それは楽しみですね。

■T  ちょっと話が戻りますけど、金子さんは、もともと心臓外科から入って、最終的にその町医者っぽいスタイルに行き着くまで。 その二つを繋ぐものってなんだったんだろうなって。 

■K たしかに、そこは気にはなりますよね。 高校の頃、職業選択凄く迷ったんですよ。 自分が何になりたいのかもよくわからなかったし、最初文系だったんで、まあちょっと法律の勉強でもして、この恐い社会から自分の身を守る事が大事なのかなって漠然と思ってたんですけど。 

■T  僕はそれで法学部にいきましたからね。 (笑)

■K 同じ発想だったんですね。 (笑)

■T  そういう発想でしたね。 

■K それで高三の時に、ターミナルケアの存在を知ったんです。 癌患者の最後の看取りだったり、そういった事を体験する機会があって。 病気治すのって外科医だったり内科医だったりもするけれども、人間死ぬ時って精神科医の存在ってすごく重要なんだなって感じましたね。
 その後、自分なりにいろいろと精神科医の事を調べまして、あっ精神科医になろうって思って実際医学部に入ったんですよ。 ただ、医学部って6年間あるので、その間でいろいろと芽生えてくるわけですよ。 実際に道で倒れてる人を救えないような医者になりたくないなって。 それで、将来精神科になるにしてもとりあえず一番大変そうな科に行ってみようかなと思ったのと、心臓外科って手術も大事なんですけど、その後の術後管理、その人が手術終わってからベッド離れて歩ける様になるまでの管理っていうのは、実はすごく難しくて、要は全身管理ですよね。 そこをきっちり抑えておきたいと思いまして最初は心臓外科医としてスタートしたんですよね。
 そこで、いろいろと勉強させてもらって、心臓外科医としてやってはいたんですが、心のどこかには、最終的には精神科医になるんだって気持ちは常にありました。 まあでも、自分の中の心臓外科医の区切りとして、弁置換っていう心臓の弁をまあ修復したり、人工弁をいれたりする手術なんですけど。 その手術をやるまでは、しっかり心臓外科医をやろうって思ってまして。 それでとうとうその手術を執刀させてもらって、とりあえず私の第一段階の目標はクリアしたんですよ。 そこで精神科医としての道をもう一度考え始めて、正直実際は、その後一年位悩みましたけどね。 もう本当潰しが効かないんですよ。 心臓外科から精神科になるってのは。 (笑)でも、心臓外科医の経験も上手く活かしながら、やっていけたら良いんじゃないかと思いまして、そこで東京に出てきて精神科の医局に入ってっていう感じだったんですね。
 それからいろんな病院勤務して、入院施設がある病院とかにも居たんですけど、なんていうのかな、もうちょっとフロントラインでやりたいなって思いがあって。 大学病院とか専門病院とかそういう大きな病院を受診する前に、もっと地域の医院って言うか、町医者みたいな感じで、近所の人達が身近に感じられる所でやって行きたいと思ったんですよね。 

■T  すごいですね。 最初っからありきで逆算していってる感じなんですね。 なかなか紆余曲折があったりするのかなって、期待していたんですが、そういう面白さがまったくない。 

■K いやいや自分の中ではけっこう紆余曲折あって、やっぱり外科で残ってた方がいいのかなとか。 これでもいろいろ悩んだ結果、今が在る訳ですよ。 (笑)

■T  すごく極端な選択肢のようでいて、精神科も心臓も結局心ってのが共通してるのが面白いですね。 (笑)

■K そうなんですよね。 (笑)ハートなんですよね。 (笑)

■T  うちの店でも、故障した車の症状だけ直しても直んないことがけっこうあったりして、それは使われ方の環境だったり、オーナーさんの使い方の癖だったり。 あと、これはちょっと非科学的な話なんですけど、オーナーさんのメンタルの状態だったりで、直しても直してもやっぱり違う形で症状がでたり、同じ症状がまた出ちゃったりとかって事も考えられるのかもなって。 物心両面から治すじゃないですけど、そこまで立ち入らないと良くなんないんじゃないかなと思うこともあって。 たぶんそんな考えって金子さんの頭の中にもあるのかなってちょっと思ったりしました。 

■K ああ。 それはでも発想としてたしかに近いですよね。 でも、私のゴルフ2全然壊れませんよ。 メンタルはちょっと揺れてますけど。 (笑)

■T  (笑)メンタルの揺れが触る機械にこう出やすい人ってやっぱりいるんですかね。 

■K いますよね。 これは体質としてあると思いますね。 

■T  うちの店の整備の現場でも、ふと気になって、「最近車じゃないもの壊れたりしませんか?」って聞いてみたら、まあ自分が触る物は良く壊れますって返事が返ってきたり。 (笑)

■K (笑)

■T  精神的に少しおかしなことになっていると、変な静電気が出てたりするってなんかの本で読んだこともありますけど。 良からぬ状態で機械を触ると良からぬ静電気が出てるから、良からぬ信号が出たりしてどっかが飛んだり切れたりとかするんじゃないのみたいな話をメカとしたりしましたけど。 

■K 東洋医学で言う気ですね。 

■T  ああ、なるほど。 そういえば以前、レイキっていう民間療法の施術をする方に、「レイキってなんですか? 」って聞いたら、「体の中を流れる電気みたいなものです。」っていう説明をされたことがあって。 ああそっか、まあどっちも気だしなって思って。 (笑)

■K うちの患者さんでも、できれば薬飲みたくないって人いるんですよ。 とりあえず漢方薬で少し様子見てみようってパターンもあるんですよね。 だから私も東洋医学的な発想ってのは少なからずあって。 それと私の経験から言うと、けっこう調子悪い人って負の気を感じると言うか、ずっと人を見てるとちょっと解ってきますよね。 だから、車とその乗り手のメンタルの関係ってのもなにかしらかあるのかもしれないですね。 

■T  壊れ方ってもあるんでしょうけど、やっぱりそういう精神状態で乗り続けていると事故る可能性も上がりますからね。 なのでそういう意味では、気付いて修正できるほうがきっとオーナーさんにとっても車にとっても良いんだろうなって思いますね。 そういう考えって和クリニック的な考え方にちょっと近いのかもしれないですね。 (笑)

■K 近いですね。 (笑)

■T  いやあ、楽しいですね。 なんかあったら僕もここに来ようって思います。 (笑)

■K お待ちしております。 (笑)でも、精神科医って職業はけっこうそういうメンタルが強い人がなるんじゃないかってイメージがあるのかもしれないですけど、私なんか布団かかえてうずくまってことしょっちゅうなんですけどね。 (笑)

■T  あの・・・・・・開業の前後って、精神的な負担ってすごくないですか?

■K いやすごかったですよ今回。 

■T  起業することって、「夢に満ち溢れてて、すごく将来に対して前向きなパワーで向かっていく」ようなイメージがあると思うんですけど。 僕も今回腰痛が悪化したメンタルの原因は、店が移転するにあたってこれから先の事を考えてて、良い方も悪い方もいろいろ考えたせいだなってなんとなく思ってるんですけど。 やっぱり何かを始めるときって、物凄くパワーを使うから、メンタル的にも結構きついですよね。 

■K きついですね。 身に染みてわかりました。 (笑)

■T  僕はそういう時に、ただ机に向かって考えているよりも、乗り物に乗って自分の体とか自分の操る機械とか道とか景色とかと対話することで、だいぶ頭の中とか気持ちの整理がされたりする部分もあるんですよね。 

■K それは大きいですよね。 だから僕も今回開業で悩んでいた時に、もう最終決断どうしようかなっていう時に、バイクで佐賀まで行ってきたんですよ。 (笑)

■T  (爆笑)佐賀までですか?

■K まあ佐賀が母校なんでちょっと昔の友達だったり、先輩に会いに行きたくなったのもあったんですけど。 ゴールデンウイーク始まる前の夜中の土砂降りの中佐賀に向けて結局ほとんど休まずに走ったんです。 

■T  千二三百キロはありますよね?

■K そうですね。 距離的には長かったんですけど、なんかよかったですね。 明け方に事故渋滞に巻き込まれて全然進まないし、ずぶ濡れだし。 俺いったいなにしてんだろうってなんべんも思って、もうクラッチを握る手は全然ガクガクしてくるし。 

■T  それはあのドカ(註:Ducati Monster 1100EVO)で行ったんですか?

■K ドカで行きました。 なにしてんだろうなって思いながらも、ちょうど福岡に入って、川も海も渡って、そうしたら佐賀は晴れてたわけですよ。 そしたらそこが綺麗で、そん時にいわゆるランナーズハイみたいな状況だったんでしょうね。 もうすごい楽しくなってしまって。 (笑)そのまんまの勢いで、友人とも会って。 その後は岡山、伊勢と順繰りにゆっくりゆっくり帰ってきたんですけど。 なんかその4泊5日のバイクの旅から帰ってきた時は、「よしやろう!」と決意できてましたからね。 だからバイクもそうだし自転車でも車でも、なんかこう一人で運転して乗ってるときって、けっこう自分の頭の中整理するいい機会なんだろうなってのはすごく思いますね。 

■T  その時に乗っている乗り物も大事じゃないですか?たぶんその時の金子さんの佐賀の旅には、ドカが合っていたんだろうし。 僕もサーキット走ってる時とか、なんにも意識しないで走るんですけど、なんかふとした瞬間に「あっ、これでいいんだ!」みたいな事を思ったりする事があるんですよね。 それも違う車で走ってる時はないんですけど、ゴルフ2で走ってる時にはあるんで。 そういう時に自分にはこの車が合ってるんだろうなって思うんですけどね。 

■K ちょうど、僕が学生時代にゴルフ2が発売されたと思うんですよね。 僕はずっと英国車マニアで、その当時もミニに乗っていてドイツ車に乗る事はないだろうなあって思っていたんですけど。 開業するにあたって1台なんか車欲しいなと、できたら5ドアで探していたんですけど。 そんな時に、たまたま野沢さんに、あのカレー屋さんに(註:日吉のHi,How Are You)連れていってもらって、そこでゴルフ2に乗らしてもらってビックリしましたね。 サイズといい、作りといい、何より操作感が良い。 あれ僕のミニより良いかもって。 (笑

■T  野沢さんのゴルフ2に乗せられて、萩谷さん家のカレー屋さんに行くっていうその図もすごいですよね。 (笑)行った先もゴルフ2乗ってる人のカレー屋さんだし。 

■K なんかいろいろ車って進化してるけど、今の車ってこうビッと来るものが中々無いから、どうしてもあの年代の車に目がいっちゃうんですよね。 

■T  そうですよね。 たしかに90年代以降ちょっと違う感じがしますよね。 

■K 今の交通事情考えると、若い人にゴルフ2良いよって言ってあげたいですね。 サイズ感が良いし、やっぱ乗ってて楽しい車。 車って楽しいが抜けちゃまずいですよね。 

■T  そうですね。 

■K もともと車って、長距離を楽に移動する為に発明されたんだろうけど、それが、段々と車って楽しい乗り物なんだって意識するようになったと思うんですよね。 

■T  でも楽しいって、より自分の責任でいろんなリスクを負う事とたぶんセットなんだと思うですよね。 だから燃費が良かったりだとか、ABSがついてたりエアバッグがついてたり、あとは最近は自動で止まってくれたりとか。 だんだん車がそういう進化してくると、楽しいとは程遠くなっちゃうものかもしれないですね。 そういう全部機械任せでなんとかしてくれるものに乗っかっていて、もし事故した時に自分の責任で事故りましたって本当に心の底から思えるのかなって。 ちょっとそれはそれで恐ろしい感じがしますよね。 もともと危ないものに乗っているわけだし。 

■K そうですよね。 

■T  人から責任や自覚を奪うと、それは楽しさもないだろうし。 

■K そうですね。 責任って楽しいの裏側に引っ付いてるもんなんですよね。 車だってバイクだってそれこそ自転車だって一歩間違えれば凶器じゃないですか。 

■T  車があまりにも普及しすぎて便利になりすぎて、車が凶器だって思ってない人がたぶん多いから気持ち悪いんだろうなって思いますけどね。 で、そんな気持ち悪い世の中になっちゃってるから、この十年二十年でメンタル弱っている人が増えてしまった、と。 

■KT (笑)話が最初のほうに戻ってきちゃいましたね(笑)

Mr.AG


~あとがき~

その部屋には窓から柔らかい光が入ってきて
壁には個性的な本達が並んでいる
カタンコトンッカタンコトンッ
外を走りすぎる列車は規則的なリズムでどこかへ向かう
車内の少年はじっと外を見詰めていた
そこにはなにがあるのか
みんな昔は見えていたあの景色
大人になると少し見え難くなって
代わりに変な空虚さが見えてきて
もうその事さえ忘れてしまって
自分を見つけて
たまに無くして
だから誰かに寄り掛かかり
背中と背中を合わせて
ありがとうって
きっと人は弱い生き物だ
でもそれでいい
ここには窓から優しい光が入ってきていた

Mr.AG

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