日本国内ではとても珍しい、チャップマンスティック奏者のwoody mojarこと西山さんは、夫婦でそれぞれゴルフ2に乗っています。 スピニング忘年会やソウルノートのライブでもおなじみの西山さんですが、所属バンド”Killing Floor”のニューアルバム「012~零.壱.弐~」が発売になったり、河口湖に引越しして田舎暮らしを始めたりという様子を見て、なにやら人生の転機なんじゃないの??と、勝手に興味を持った店長ノブ田中は、引越ししたての西山家にお宅訪問!さてどんな話が飛び出すのやら。 (田中 延和)

田中 延和(T)
西山 克幸(N)


■T どこか懐かしさを感じる家ですよね。 田舎のおばあちゃん家に来たみたいな。

■N その懐かしい感じが、私も気に入っているんですよ。

■T 築年数が不明なんでしたっけ?

■N ええ。 大家さんに「どのくらい前に建てられたんですか?」って聞いたら、「戦後だね。」 って。 内緒なのか、本当にわからないのかは不明ですけど。 区切りがそこなんだって。

■T (笑い)

■N 敷金礼金も、「いいよいいよ。 そんなの。」 って。 そのアバウトさが土地柄というか、それも含めたいろいろな境界線が曖昧なところも、田舎の良さなのかなって思いますね。

■T 田舎ならではの良さと、逆に大変なところもあるんでしょうね。

■N あると思いますね。 だからここに引っ越すにあたって、まず今までの生活の価値観とかリズムとかは、いったん忘れようってカミさんと話したんですよ。 そうしたら、意外にこっちの方が居心地いいですね。 まだ住み始めてそんなに経っていないので、長く住んでいくうちにだんだんと大変な部分も見えてくるんでしょうけど。 まあ、それもその都度楽しんでいけたらなって思いますね。

■T そもそも、河口湖を選んだきっかけはなんなんですかね?

■N カミさんが、以前からこの近所に農業を習いにきていたんですよ。

■T 農業ですか?

■N ええ。 少しでも自分達の食べる物は自分達で作りたいと彼女が考えていて、八王子にいる間も畑を借りてやっていたんですけど、本格的にやるためにもっと田舎に住みたいって話がでてきて。 どうせなら仲間も増えたし、この地域に住もうって。

■T そういう自給自足的な生活って、ちょっと憧れますね。

■N まだ始めたばかりなので、実際どのくらいの事までできるかはわからないですけど。 出来る範囲でやっていけたらと思いますね。

■T すぐ近くにそういう仲間がいると、困った時とかにもすぐに助けが来て、アドバイスも言ってくれたりいろいろと助かりますよね。

■N そうですね。 本当歩いて数分の所に農業の先生もいらっしゃるので心強いです。

■T うちの店がある所も20年位前は、こういう田舎だったんですよ。 京王線が橋本に来るようになってから、すごく便利になっちゃって。

■N 開発が進んでいったんですね。

■T あの辺りって僕が子供の頃、町田市の中でも田舎の暮らしがある所ですって社会科で習っていたんですよ。 大人になって店を始めてみて、やっぱりいい所だなって思っていたんですけど、この20年でだんだんだんと普通の街になって行っちゃいましたからね。

■N まだ少しは残ってますよね。 青木医院の所とか。

■T あの辺は残そうとしてますよね。 まあ、残す活動をしてないと残んないよなって、つくづく思いますけど。 便利になるのは良い事なんだろうけど、いろいろと変わっちゃうとやっぱり寂しく思いますね。 ここは今のとこそういう心配もなさそうですね。

■N そうですね。 ここまで来るとあまり開発とかは無さそうですね。 その分多少不便な所もありますけど、これは考えようですね。 逆に便利じゃないから気付かされた事もありまして。 この家って、ブレーカー15Aしかないんですよ。 とりあえずこのままでやってみようと思っていて、今のところレンジ使っても大丈夫だし、他でセーブすればなんとかなるかなって感じなんですけど。 もちろん部屋の明かりも抑えるので、最初のうちは暗いなって感じたんですけど、それに慣れてくると、むしろこれが自然なんだって思えてきたんです。 もちろん外も真っ暗でとても静か。 だから、夜は自然に眠くなるんです。 もう眠くて眠くてしょうがない。 朝は朝で目覚ましとかなくても自然に目が覚める。 それはこういう暮らしぶりにそのまま身体が反応してるということなのかなと。

■T 電気とかなかった昔の人達は、そういう生活のリズムが出来上がっていて、日が出ると起きて、夜になると寝る。 自然と上手く付き合いながら生活していたんでしょうね。

■N そうですね。 ある意味原点回帰じゃないですけど、都市部にいると忘れてしまっている体の感覚。 そういう当たり前の事に、改めて気付かされるのは面白いですね。

■T ちょっと話がずれちゃいうのかもしれないけど、失われた20年みたいな事ってよく言いますよね。 バブル崩壊以降、今までずっと社会が迷走してるとか、方向性の違った努力をすることで、おかしな方にしか行ってないとか。 作られてるモノもそういうものが多いんじゃないかなって思うんですよね。 それを僕はゴルフ2という切り口から説明しても面白いんじゃないかなって時々思うんですけど。 人間がやることはこれだけでいいですよ、後はコンピューターがやってくれる車を作っていますからみたいな。 だから人は、乗ってるだけでいいんですよって。 でも重大事故が起きた時は、エアバックやABSがあっても人は死んでしまう。 なのに安全運転をしようってところには、昔ほどお金も時間も使ってないのかもしれない。 だけど車はどんどん高性能化していくから、踏めば速いし。 そんなに速い車って必要なのか?そこまでコンピューター制御も必要なのか?それって最終的に人間が退化しちゃうだけじゃないかなって思うんですけどね。

■N そうだと思いますね。 よくゴルフ2で言われる事だと思うんですけど、スピードを出すと、これはいつもより速く走ってるぞってのが、体で感じられるのは良いところだと思うんですよね。 でも、今の発想って速くはなったけれども、むしろその速さを速く感じさせないような作りになっていて、それは遮音性の向上とかが絡んできて、快適性にも繋がるんでしょうけど。 でも快適な事イコール安全なのかって事ですね。

■T そういう方向に進化してる車って、子供が喧嘩しないように枠に嵌めて、本当に喧嘩したらどうなるのかわかんないまま大人になってしまうみたいな事と、たぶん似たような感じかなって思っていてすごく危険な臭いがするんですよね。

■N 自分の皮膚感覚で経験的に身につけていく事が出来ない。 むしろそういう場を奪われてしまうって事ですからね。

■T 都市に長く住んでいると、結構そういう事が当たり前になっていて、それに慣れきっちゃって、それを普通なんだと思ってしまう怖さみたいなものがありますよね。 その環境に流されずに、自分の身体感覚に合った時間の流れ方とか、自分の中で“特にポイントになる部分”ってのを大事にしたいんですよね。 おそらく西山さんはそのステップを踏み出した人なんだと感じます。

■N 私もまだ全然明確じゃないですよ。 完全に後付けで、「あっ、こんなふうになったんだね。」 「ここに住むって事はこういう事なんだね。」 って、住んでから考えたりするんですけど、わりとそれってどうなるかわからないから面白そうみたいな。 そういう感じの楽しみ方ですよ。

■T 直感で決めて、理由付けは一歩後から考えていくみたいな感じですね。

■N まあ、流れで気付いたらこうなってたっていうぐらいのものなんですけど。 カミさんが直感というか感覚の人なので、私はそれに便乗して新たな楽しみを見付けていく感じなんですよ。 そこに停めている二台のゴルフ2だってそうですよ。 カミさんが、たまたまスピニングのサイトのちっちゃい写真だけ見て、これが良いって言って。

■T (笑い)不思議ですね。 同じ形の車いっぱいあるのに。

■N そうなんですよね。 結局その車を買いましたからね。 私はその時は違う車に乗っていて、たまにカミさんのゴルフ2にも乗せてもらっていたら、「この車なんかいいね。」 ってなってましたね。 それで、カミさんがゴルファーズダイジェストに取り上げていただいた後に、「なんか楽しそうだね?僕もまぜて欲しいな。 いれてよ。」 って話をしたら、「いれてもらうためには、これ持ってないとダメ。」 って。

■T (笑い)

■N じゃあ、次の車どうしようかって時には、ゴルフ2一択になってましたね。 そうだ、あの店に行こうって。 私には、スピニングとゴルフ2が一つのパッケージだったんですよ。

■T それは嬉しいな。

■N それで、いざ自分のものにして乗ってみたら、今度は後からくるわけですよ。 これは、今まで乗ってきた車には無かったなっていう事がいろいろと。 それは実際に乗ってみないとわからない事だと思うんですよね。 その良さも字面や口頭で言われても全然実感できないもので、「あっ、そういう事だ。」 って乗りながらジワジワと感じてくる事だし、素直に良い車だなってところに行き着きますね。 家探しをしている段階で、あのゴルフを二台並列で停められるかどうかってのをすごい基準に物件を探してたんですけど。 ここは、並列はムリだったんですけどね。

■T でも部屋のどこにいても、ゴルフ2が違う角度から眺められていいですね。

■N たしかに、いろいろな表情が見れますね。

■T こういう生活を見直して、考えて修正していくスタイルってステレオタイプの生活とか、一般的な暮らしをしてる人には中々想像つかない世界だと思うんですよね。

■N たしかに一般的とは、少し違った考えなのかもしれないですね。

■T ここで音楽に専念する環境が整うって方向には行かないんですか?

■N 整えようと思えば整うんでしょうけど、今は専業音楽家みたいなものにはあまり惹かれないんですよね。 音楽だけっていうよりも、いろいろ他にも楽しい事や、その時に興味がある事を優先したいですし。 そこに縛られると、音楽自体も楽しくなくなると思うんですよ。

■T それが、田舎での暮らしや人との出会いであったり、車でもあったりするんですね。

■N そうですね。 まあ、仕事に関してもそうですね。 八王子にいた時は、塾の講師をしていましたし、その前にも別の仕事をしていました。 仕事でも、新たな発見や刺激を受けつつそれを最終的に音楽に繋げていければと良いのかなと。 15年以上同じバンド(キリングフロア)でやってるんですけど、メンバーそれぞれに変化があって、それをうまく持ち寄ってバンドとしても変化しているから、15年経った今でもまた新鮮な気持ちで続けられているっていうところはありますね。

■T この間のライブを観て、みんな一人一人が全然違う個性の人達なんだなって思って。 そのメンバー一人一人の個性もその時々で変化をしているんですね。

■N そうですね。 その個人個人の変化を、バンドとして上手く進化という方向にもっていけたら理想的だなと思いますね。

■T キリングフロアって、管楽器三人と打楽器三人じゃないですか。 その異色さがこのバンドの面白さであり、良さにも繋がっているんでしょうけど、それを色としてまとめるのってちょっと難しいんじゃないかなって思っていたんですよ。 でも、それが自然とまとまっている。 これを音的にまとめているのって、チャップマンスティックっていう楽器であり、西山さんなのかなって。

■N どっちかと言うと繋げてる感じですかね。

■T そうですね。 キリングフロアって器の中にメンバーが入っているんですけど、全然違う所に違う様に収まってるから、とりあえずチャップマンスティックっていう液体をドーッと入れて固めてみましたみたいな。 そういう感じのイメージがして。

■N 繋ぎという意味ではそうですね。 私もこのバンドで、この楽器の特性をうまく活かしてもらっているなって常々思っているんですよ。

■T ベースとキーボードが一緒にいるみたいですもんね。

■N そうですね。 チャップマンスティックって特殊な楽器ですからね。 でもリーダーはこのぐらいの配分がちょうど良いんだって言ってくれるんですよ。 ずっとベース弾いてる人がいて、一方でずっとキーボード弾いてる人がいたら、それはちょっと多すぎるし音的にも濃すぎる。 この楽器で音と音を繋げるぐらいが管楽器の人達の引き立ち方もいいのかもしれないですね。 管が三人いて、一気に別の音吹くとそれだけでコード感が出ちゃうんですよ。 そこでさらにコード楽器がいたらそれは邪魔だし、そこはベースラインだけでいいんです。 でも場面によっては、誰かが一人でソロ吹いてる時にはコード感が欲しいこともあると。 それを管で出そうとしたらソロじゃなくなっちゃう。 そこをあの楽器で、ちょっとコード感を出せば良い感じになる。 そのバランスに至るまでは、模索時期もあったんですけど、今の形が一つの完成形ですかね。 後はメンバーの季節が、少しづつ順繰りに変わる事によってその時々の演奏になってるのかな。

■T あと、ライブでちょっと印象的だったのが、けっこうラフな感じから始まって、最後の方に向かって正確性も上がって行くのはなんでだろうなって。 普通は、だんだんと温まって、ピークなポイントが来て、ピークから最後に向かっては正確性は落ちるんですけど、熱さは上がるとかって多いじゃないですか。

■N 勢い上がってそれと共に、細かい所はわりとラフな感じですかね。

■T その場で皆で盛り上がる感じの方が優先される。 それがライブの楽しさだって言う人もいるし、そういうのが一般的だと思うんですけど。 最後に向けて、だんだんノリも上がって行って最終的に神懸かり的な演奏の正確さ。 この前、そう感じたんですよね。

■N それは選曲のせいもあったのかなと思うんですけど、でもそこは本当にお客さんそれぞれのテンションと、僕らメンバーの気持ちというか、それぞれの呼吸が絡んで出来たものですよ。 自分達が意識的にやってるわけじゃないですからね。

■T ちょっと変わっていて独特で面白かったし、良いライブだったなって。

■N そういうふうに見ていただけて、嬉しいですね。 以前はライブ中も、いろいろ考えてやっていたんですけど、ある時期からあまり考えないようになったんですよね。 考えなくても形になってるってのは大事で、メンバーがそろって「じゃあやろうか。」 って曲をやる。 そこにあるのはいくつかの決め事なんだけど、その決め事の中では自由。 毎回来てくれるお客さんも、たぶん同じ曲をやっていても、この間と全然違うなって感覚が起こると思うんですよね。 それは自分達も演りながら、「うっ!」てなる時があるんですよ。 そういう瞬間があればあるほど、楽しいんですよね。 「なに今の?」ってなった時は鳥肌が立ちます。

■T じんさん(註:スピニングガレージスタッフにして秋本道場Jungle Jnction代表の秋本じん氏)が、道場で教えている時に言った言葉ですごく印象に残ってる言葉があって。 「しっかり考えろ。 しっかり考えて練習しろ。 しっかり考えて練習してやった先に、何も考えなくて出来るようになるから。 そうなるようにするために考えるんだよ。」 って。 身体動かしてるときに、考えなくなるように始めのうちは考えた方が良いと。

■N なるほど。

■T それで最終的には、考えなくなる。

■N すごくよくわかりますね。 考えてると動きって止まるんですよね。

■T じんさんも同じ事言っていました。

■N それは、何かを留めてしまう。 そうならないために、自然と自動的になってる部分は必要で、もちろん意識はあるし何かを考えてはいるんですけど、その音をこういうふうに出そうって考えるのとはちょっと違っていて。 もっとイメージにダイレクトに繋げて、考えるよりも感じながら勝手に演奏してる。 音に対して、脳が開放されてる感じが理想ですよね。

■T 意外と脳の中で処理してる事で、言語化されてるものとか、論理化されているものって、実際は範囲が狭いかなって感じる事があって。 だから、そこの中だけで完結しちゃっていると、自分の脳の中の本当にごく一部しか使ってないのかなって。 話が戻るんですけど、なんとなくゴルフ2に乗って、だんだん良さがわかるみたいな。 でも言語化出来る良さと、言語化出来ない良さがありますよね。 言語化出来ないものが、後々になってからこういう事かって説明がついたりする。 まあ、もっと前に言語じゃなく感覚でわかってたりするんですけど、それが言語化しないと踏み出せないっていうサイクルに陥るともったいないですよね。

■N そうなんですよね。 でも感じる事って、その部分はどっかで遊ばせてる状態じゃないとたぶん働かないんだと思うんですよね。 考える時間ってのはもちろん必要なんですけど、感じ取るって事をしているときには、どっかでそれを開放してる状態じゃないと。 それは塾やっていてもそうでしたね。 塾って勉強を教えるところだというのは明らかなんだけど、その教えるって事に専念してると、子供はそっちのけになっちゃうんですよ。 子供はどう聞いてるだとか、今どんな顔をしてるだとかに気がいかないで、説明や解読だけになると、ほとんど意味のない時間になっちゃうんですね。 理解させる相手は子供なわけで、しかも彼らがどういうふうに掴むのかっていうのは、それはもう、個人個人みんな違うから顔を見ながらやっていくしかない。

■T 子供が勉強して、ロジックをなぞるのを鍛えるのって、感覚的に解っているものの中で言語化できるものってほんの少しですけど、それを他の人と共有するために、ロジックを鍛えてこことここ(註:感覚と言語の対比をさして)を実感しようねって事なんですかね。

■N 子供は子供ながらに、自分の経験値の中でこれがなんなのかっていう事を感じ取って、その中でなんかここは違うからって新しいものを自分に順応させていくというプロセスだと思うんですよ。 それを続けていく事によって、気付いたら共通認識が出来上がっている。 まあ、良し悪しは別として、作業としてはそういう作業だと思うんですよね。 こちらとしては、そういう作業を一緒に共有していくガイド役みたいな立場なんだと思うんですよね。 なにか限られたやりかたを押し付ける立場ではなくて、そういうプロセスに同行してしかるべき場所へ導く役割みたいな。 そのガイド役としては、本人が今どんな状態なのか(たとえば「足取りがちょっと重そうだな」とか、「この道行くと危ないな」とか)というのが見えてないといけないですよね。

■T それは、きっとライブの積み重ねですね。

■N 本当そうですね。 そういう面では、凄く鍛えられましたね。 塾に限らず、田舎に住むのも音楽でも車でも、要は人と人ですからね。 そこでどう感じ取って、それをどう活かせるかだと思います。 まあ、車は人ではないですね。

■T (笑い)ゴルフ2乗りの人達は、よく車を擬人化してますけどね。

■N たしかにあの車は、人間臭くはありますね。 (笑い)

■T いろいろと話をして、西山さんの中では全部が繋がっているんだなって感じました。

■N どれも同じ感覚を使ってやっているなっていうのは実感しますね。 「田舎に引っ越したりして、また全然違う事始めたの?」って言う人もいますけど、私にとっては感覚的にどれも同じ事なんですよね。 ただ一方で、自分の理想って、半年前の自分が今の自分を見たら、「お前こんな事になってんの?」って想像もつかない連続になっているのが理想なんですよ。 もちろんそれは、なにか一本の線の延長線上なのかもしれないですけど。

■T 良いですね。 それ理想ですよね。

■N 半年前の自分に、「今の自分想像できた?」って。 その半年前の自分を、ひっくり返らせたいって思いますね。

(END)


~あとがき~

小雨の降る河口湖は、もう半袖では涼しい季節になっていた。 予定時刻が近づいても、田中さんは現れない。 私と小高さんは先に西山さんの御宅に向かうことにした。 庭先に紺のゴルフ2が一台、古い家屋と妙にマッチしている。 「カミさんは、今買い物に出ていて直に帰りますから。」 笑顔の西山さんと照れ屋の娘さんが出迎えてくれた。 中にお邪魔し畳の上に座ると、どこか懐かしい気持ちがした。 しばらく雑談していると、外から聞き覚えのある音がこちらに近づいてくる。 外に目をやると、この家のもう一台のゴルフ2が家の前で停まった。 二台のゴルフ2がこちらを見ているようで面白い。 それからしばらくして、ようやく田中さんが到着した。

「今日のは、もう秋の味だね。 夏のトウモロコシって、もっと皮が薄くなかった?・・・どうでもいい?」対談も中盤に差し掛かった頃、奥さんが地元の朝取りのとうもろこしを茹でてくれた。 甘くて美味い。 粒もしっかりしている。 真夏のとうもろこしは、きっともっと甘くて美味いのだろう。 娘さんも大きな口を開けて、西山さんの声には耳を貸さず黙々と頬張っていた。 

二人の会話。 外の雨音。 子供の笑い声。 台所ではなにか料理をしている。 この部屋の畳の上で、短い時間にいろいろと感じた。 実は本当に必要なものって、そんなに多くはないのかもしれない。 本当に大事なものに囲まれて、ゆったりと時間は流れ、ゆったりと成長していく。 子供も。 そして大人も。 
Mr.AG

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