放談 Vol.2
■O ジャケ買いって大事だよね。
■T ああ、ジャケ買いしましたね。でも、今は視聴もできるし、いろいろと判断ききますからね。
■O なんかさ、ジャケットの写真見て、アルバムのタイトルとか曲名眺めながらイメージしたじゃないですか。
■T そのわくわく感が、いいんですよね。
■O もう、今の世代の子達は、CDのライナーとかもいらないんだろうね。
■T いらないんですか?
■O 音源がダウンロードとかで手に入るし、YouTubeでも見れるし。
■T でもその音を造るのに、どんな人が関わって、どんな物を形造ろうとしてるのか。より理解が深まるというか、そういう想像を膨らましながら聴く楽しみもありますよね。
■O 好きなアーティストが、今までどういう音楽を聴いてきたかとかも気になるし、あの人が、こういう曲聴いてたんなら俺も聴こうみたいな。それで聴いてたら、ギターで参加してる人が同じ人だったとかさ。
■T この間、昔よく聴いてたCDのライナーを見たら、お客さんがクレジットに載ってて。その後、その人とそのCDの話をしたんですよ。
■O そういうのって、楽しいし、なんか嬉しいんだよね~。
■T 今まで、自分がさんざん聴いてたものが、新たな発見で、また新たに楽しめる。
■O 少し見え方というか、聴こえ方が変わったりするんですよね。
■T 今はネットで色々拾えちゃう時代ですからね・・・。
■O ネットね。そういえば、俺結構いろんな仕事してるのに、ウェブで自分を検索すると「けいおん」ばっかなんだよね。
■T たしかに、「けいおん」しか出て来ないですね。
■O まあ、それはそれで得る物あったからいいんだけど。そう、だからホームページ作れとか皆にすげー言われるんですよ。
■T ああ、何か自分から発信する手立てがあるといいですね。
■O でも、なんか検索してすぐ出てくるのも。ね、なんか恥ずかしい様な?
■T たしかに、本当に面白い人とか、凄い人とかってウェブで検索しても、あんまり出てこないケースって、多かったりしますからね。
■O 「けいおん」だけってのも悲しいし。(笑)
■T たしかにそれも微妙ですね。俺も最近まで、大井さんがどういう仕事やってるのか、よく解らなかったんですよ。今でもいまいち解ってないですけど・・・。
■O 説明しづらい仕事だもんね。
■T マニュピュレーターですよね。簡単に言うとどんな仕事ですかね。
■O すっごい解りやすく言うと、バンドで演奏出来ない音ってあるじゃないですか。弦の音だったり、電子音とかだったり、生で演奏出来ない音とか。そういう音を僕から出すんですよ。それの職人だよね。
■T それを、裏でやるんですか?
■O 僕は、あえて裏方。本当は、表に出なきゃいけないんでしょうけど、あんまし好きじゃないんですよ。どっちかって言うと、自分が目立つより、お客さんを喜ばせて、コンサートを盛り上げたい。まあ裏方根性ですよ。
■T 潤滑油的な感じですかね。
■O まあ、そうですね。スタンスとしては、似てるのかもしれない。
■T 大井さんみたいな人が、裏方じゃなくてメンバーとしているバンドって、あるんですか?
■O 1番有名所で言うとYMOですね。まあ、テクノとかは結構いますよね。
■T これまで、いろんなアーティストと一緒に仕事をしてきたと思いますけど、もうこのアーティストと専属で、この先やっていきたいとかって人いたりするんですか?
■O まあ、今レギュラーでやってるのが、PERSONZ、GACKT、RADWIMPSとかなんだけど、彼等とはずっとやって行きたいですね。
■T 20年来の付き合いのバンドもいるって言ってましたもんね。
■O そうそう、PERSONZに関しては長い付き合いだし、本当に家族みたいなもんですからね。
■T それでも、メンバーとしての位置付けじゃなくて、裏方としてなんですよね?
■O なんだろね。俺ってそういう性分なんだよね。
■T それが、職人的な大井さんの魅力なのかもしれませんね。で、今回もレギュラーでやってる某大物アーティストの海外ツアーが丸々とんじゃって。
■O よく、直前にとばしてくれるんで。
■T 丸々海外ツアーがとんじゃうと、がっかりですね。
■O がっかりだけど、空いたスケジュールは某車屋(註:スピニングガレージのことです・笑)でバイトできる嬉しさもあるからね。
■T 最初は、遊びに来てたのに、暇ならバイトしてく?みたいな。
■O 1年ちょっとぐらいたちますかね。やっぱ居心地いいよね。
■T 部室みたいな所ですけど。
■O 部室っぽいな~。なんか、好きな事を仕事にしてる連中が集まってるってのもあるんだろうけど、音楽の現場に似てる部分があるんでしょうね。
■T うちの店でも、大井さんがなにか言ってくれる事が、けっこう直球で響く事が多いんですよ。
■O いや~、でも最近直球すぎんのかなって。
■T うちの店は、直球な人がいないから一人位いたほうがいいんですよ。
■O 皆、妙に優しいから、遠回りしてますよね。
■T そうですね。大井さんがいると話が早い。良いことも悪い事も話が早いから、だったら本来話が早いほうがいいじゃんって思うんですよね。皆、気心がしれてるし。だけど、ちょっとクッションおいて気を使っちゃう様な面ってのが、スタッフ間でもあるし、お客さんとの間でもあるんですよね。
■O お客さん目線だと、敷居が高く感じちゃうよね。
■T ああ、そうですよね。お客さんと付き合いが長くなって、あっ、この人この位の気の遣い方で心地良かったんだって事とか、お客さんにかえって気を遣わせてたりするときがあるわけですよ。そういう所が、大井さんが来てくれてると、ちょっとわかりやすくなるんじゃないかなって思うんですよ。
■O けっこう皆あるタイミングで、シャッてブラインド閉じるから。
■T ちょっとナーバスな感じであったりとか、少し引っ込み事案であったりとか。あと、僕らの場合「ネットでバンバン露出して、自分こそ本物だって声高に言ってる奴ほど本物じゃない」みたいなことを思っているフシがあるから、言葉が先行するのはどうしても嫌で、だから常に直球で言葉を投げない姿勢みたいなのが日常化してる。
■O それ直球でいいのに。
■T そう、本当は投げてもいいんですよね。まあ、俺も反省する所はあるんですけど。俺でさえ直球じゃないから。でも、大井さんから見て、うちの皆がそうだっていうのがわかって、そういう所に切り込むのは、やっぱり大井さんの仕事の現場が常に直球だからなんですよね?
■O 直球以外なにものでもないからね。だって、その日の夜には幕開いちゃうからさ。
■T 音楽って、形がなくてその場で出来てすぐ消えちゃうから、感情にストレートにアクセスしないと、成功も失敗も見えにくいのかなって。
■O まさしくそう。やっぱお客さんの思い出に残って、また観たい。また聴きたい。また感じたい。って思ってもらえるライブを観せるために、限られた時間の中で今出来る事をやるだけ。だからより直球を求められるし、もちろん俺もそれを求める。
■T 今しか出来ないことをやったその先に、はじめて成功があるんですね。
■O そこでうちらスタッフと、演者、メンバー、それにお客さん。それが全部合致して歯車があった時、最高のライブの完成ですよ。
■T ああ、いいですね。
■O まあ、10年に1回あるかないかですけどね。全部が合った時って、もうそん時は、本当に勝手に涙がぼろっぼろ出てきますよ。
■T そんな仕事めったにないよな~。
■O やたら大変な仕事だし、つらい時は本当つらいから。でも、そん時のお客さんでね、一気に報われる。その為にも、今ある時間の中でやるだけだから。
■T 僕自身、音楽をかける仕事を昔してたにもかかわらず、あまり生の音楽に触れる機会はなくって。ライブならではの良さみたいなものがちょっとわかったのは、本当この間のスピニングガレージ忘年会のライブ。
■O ああ。あれ、最高だったもんね。
■T ああいう事が、”完成すること”を目指して作る著作物では、出来ないものなんだなって思ったんですよね。完成されたものを提供するんじゃなくて、その場でみんなで作り上げるという面白さ。まあ、知ってる人ばかりでやっている面白さってのもあったんですけど。それは作り手も、聞き手のお客さん達も、全員知ってる人ばっかりだったんで。そういうやりとりっていいなあ。
■O コンサートとかライブって、コミュニケーションツールですからね。
■T 互いにリアクションしあって、皆で作り上げていくんだなって。
■O その一つ一つの歯車が、本当凄いんですよ。あれは、ライブじゃないとできない。
■T 誰でもタダで簡単に聴けて、ネットでいくらでも探せる曲はまあいいから。ライブ行こうぜみたいな感じですね。
■O まさしくそうなんだよね。ネットでもテレビでもなんでもいいんだけど、そこで面白そうだなって思って、まずライブに足を運んでくれる。そこで、よりそのアーティストを好きになって、何度もライブに来てくれるってのは、やっぱ嬉しいよね。
■T 著作物が売れない時代だからこそ、よりライブが大事になってきてるのかもしれませんね。
■O ライブ行ったら、ネット配信でもなければ、CDでも買えないものが得られるからさ。
■T 変にCDの売り上げが何万枚とかそんなのではなく、いかにお客さんを満足させるライブを続けていけるか。その事の方がより大事になってきているのかもしれませんね。
■O アーティストとしては、もちろんCDが売れなければ厳しくなると思うし。でもね、良いライブが毎回出来てれば、自然とその売り上げとかにも繋がっていくと思うんですよ。
■T 僕も、やっぱり新しいゴルフもやんなきゃ、商売この先つらいよなって思った時期があったんですよ。
■O ああ。ビジネスっていうもの考えると、その葛藤はありますよね。だって、俺もありますよ。まったく興味ない現場とかでも、やんなきゃいけないのかもとか。
■T ちゃんと儲かる仕事をやったほうがいいでしょうからね。でも、儲かる仕事に自分の時間を使うことで、納得のいかない人生の時間の過ごし方みたいなものの割合が増えていくと、それはそれでどっかでイヤになるんじゃないかと思って。
■O うん。
■T 好きな事をストレスなく続けていくバランスを模索した方が、いいのかなって最近は思うようになったんですけどね。まあ、それは大井さんからヒントをもらった部分ってのもあるんですけどね。
■O それをやってく為のストレスは、もちろん出てきますよね。
■T まあそうですね。そうやってく為のストレスが、好きな事をやってるから、まあしょうがないんじゃねえとか、まあそれはいいだろって思えるのと、思いきれなくなる所のバランスよりも、手前に常に置いとける様に折り合いつけたいですね。
■O いや、でもそれはもがき続けますよ。
■T そうですよね。もがき続けてこその人生ですよね。好きな事やって、死ぬ 時まで生きたいですからね。
■O それがだって、ぽーんと出来たらつまんないもん。
■T そうですね。それはそういう事が、もしぽーんとあるとすると、大井さんが裏方にこだわってる意味すらなくなる。
■O 意味なくなるよね~。
■T ですよね。まあ、前にばーんと出て、それで自分の名前だけで内容問わず仕事が来る様になっちゃうのは、それはそれでいいいのかもしれないけど、そうじゃないですよね。
■O 音楽業界は、そういうのありますからね。
■T いきなりCD売れたりしますもんね。
■O そこで、ずっと売れてる分にはいいんだけど。
■T 売れなくなる時期がくると・・・。
■O それで苦しんでるバンドも、多いですからね。
■T それでも、ずっと続けていて、その時期よりも今の方が実力があるって言われてるバンドもいますからね。
■O まあ、それで解散しちゃう人達も多いけど、だけど続けるってのが大切なんだよね。
■T うちもいろんな人から、いろんな事を言われる事があるんですけど。続いていければいいなって、そういう話聞いて思うんですよね。続ける。ただただ続ける。
■O すっごい労力だと思いますよ。
■T ですよね。
■O 発信し続けなきゃいけないわけですから。
■T なんか、音楽の世界とかって、一発でもブレイクしたら一生分稼げちゃうから、そこだけを夢見てる人って多いと思うんですよね。でも、固定のファンが付いてて、ずっと続ける事ができるって事が、本当の成功なのかもしれませんね。
■O だからね、簡単に武道館が出来る今は、おかしいんだよ!だって前は、あの玉ネギの所でやるのが凄かったんだよ。ちょっと売れれば出来るってなんだよそれって。あの場所は、特別なんです。
■T サンプラザ中野は、それを歌っていたな。
■O 懐かしいな。あれ泣ける歌なんだよね。
■T 大井さんは、もうずっとゴルフ2に乗ってて、他に乗る気がしないって言ってるじゃないですか。そこで、音楽とゴルフ2そこに共通する所ってありますか?
■O なんだろな。一緒なんだよね。
■T 感覚的にですか?
■O そうそう。音楽もだけどさ、要は、ここ(心)にくるかこないか。
■T 自分の車を乗ってる感じにしても、音楽を聴いてる感じにしても、もうくるかこないかだけですよね。
■O 好きな音楽って何年経っても好きだし、ゴルフ2だってそう。何年たっても、ここにくるからですよ。
■T なに不自由ないですからね。
■O なに不自由ないし、全然古臭さ感じないじゃないですか。
■T なに不自由なくて、こんなもんいらないのにってもん、ついてないですからね。
■O まさに、シンプルイズベスト。
■T うちの店でも、ゴルフの5とか6乗ってる人が、あんな高性能つまんないって言って、2に戻って来たりしますからね。
■O 似てるかどうかわかんないけど、音楽でも、プロのうまいミュージシャン使えばある程度のクオリティーにはなるんですよ。
■T まあ、そうですよね。
■O でも、中には器用にどんなジャンルでもこなす人もいるけど、そういう人って、それだけになりがちなんですよ。
■T 個性が無い訳ですね。
■O そうそう。聴いてても、ああ、うまいね。いいんじゃないって。その一方で、俺はこれしかできませんけど、このスタイルでどこまでも行きます。って人、すごくかっこいいんですよね。
■T たしかに不器用だけど、人はそれに惹かれたりしますからね。
■O そういう人のほうが、実際人気あったりもしますからね。あの人の音じゃなきゃダメ。あの人のタイム感がいいとか。
■T って事は、ゴルフ2は洗練されてはいないんだけど、芯のある良い意味で不器用な車って感じですかね?
■O 器用ではないでしょ~。なんだろな、ゴルフ2はロックな車かな。
■T ロックな車ですか。
■O 上手いとか下手とか、古いとか新しいとかを超えたもの。上手く説明できなけど、こう、くるじゃないですか。
■T きますね。じゃあ、ロックな車を扱ってる俺もロックですかね?
■O いや~、ノブさんはパンクだから。
■T 俺がパンクですか?
■O うん。
■T 俺、元ハウスDJですけど。
■O うん。知ってる知ってる。(笑)
■T なんでですか?
■O なんだろな、結構言ってる事が、この人パンクって思う事が度々・・・。
■T はじめて言われました。
■O 皆、口に出さないだけじゃないですかね。
■T そうですか?でも俺、好き勝手な事言って、やってるだけなんですけど。認めてくれたり、共感してくれたりする人がいるから成り立ってるし自信にもなってる。世の中からズレてるかもしれないけど、俺の周りの人的には、ズレてないし。
■O それが、パンクだって。
■T まあ、ロックでもパンクでも、ゴルフ2好きの人が共感してくれてるのならいいんですけどね。
■O そうそう。それが大事ですよ。
■T そういえば今日、普通の車の整備やってる会社の次長と話してて、『やっぱり、自分がどういう風に車に接してあげてるかが車に伝わるから、それ次第で車の壊れ方って変わるじゃないですか。』って話をしたら、『いや、それはないよ。』って。
■O 全否定かよ。
■T えーって思って。それわかんないのって思って。びっくりしちゃったんですよ。
■O いや、でもそれが一般なんだろうなあ。
■T やべえ、俺非常にズレてる所を言ってしまったと思って。
■O いや、ずれてていいんですよ。
■T 結局ずれてようが、なにしようが、自分の言ってる事の方が、より真実に近いというか、ゴルフ2にとっては真実じゃないですか。うちのお客さんだったら、誰に話したって周知の事実じゃないですか。訳分かんない壊れ方する時は、自分の思考回路が訳分かんない迷宮に入ってる時だったりするし。
■O たしかにそうですね。いやあ、あの車にはなにかがありますよ。あのゴルフ2っていうのは。
■T そうですね。なにかがあるって思いながら、皆乗ってるんですけど、何があるか客観的に証明する手立てなんかないんですよね。スペックたいしたことないし、ステータスないし。
■O ただ、皆自分の車が一番好きだっていう。
■T そうなんですよね。皆自分の車が一番好き。
■O 他の車乗りの人達は、どうだかわからないけど、ゴルフ2乗りの人って、皆自分の車が一番好きでしょ。
■T そうそう。それと面白い事に、ゴルフ2乗りの人達と、うちの店の人が話してても、俗に言う車好きの人とかじゃなかったりするんですよね。
■O 車好きじゃないんだよね。ゴルフ2好きなんだよね。
■T たぶん、普通に車マニアとか、車好きの人が左脳で切り取って評価すると、お前バカじゃないので済んじゃう様な事なのかもしれないけど、頭が良いだけでいろんな物事を切っていく人には、わからない境地があるんじゃないかなって最近思うんですよね。
■O ゴルフ2には、いろいろと何かがありますね。
■T いろんなお客さんと、ゴルフ2談義をしていくうちに、その答えが見付かっていくのかなって思うんですよ。
■O 今はまだ、核心に迫れてるようで迫れていない。
■T 結局、迫れないほうが、ずっとこんな話が出来て面白かったりするんでしょうけど。でも、もしかしたら他のゴルフ2乗りの人が、なにかを掴んでいて、そのうち俺等に教えてくれるのかもしれない。
■O なんか、映画みたいだな。そのゴルフ2乗りを求めて今日も歩いて行くみたいな。
■T その映画のクライマックスに登場してくるのは、いったい誰になるんでしょうね。
■O ちょっと楽しみだな。
■T 車を語ると、つまらない車評論家多いですけど、ゴルフ2乗りのうちの周りの人達は、何か語ると面白い人多いんで。少し話すと、いわゆる車を語る人には出ない言葉がいっぱい出てくるし。大井さんも車好きの中にいて、車を語るタイプの人ではないですよね。
■O だってさ、何語ったって、結局自分の車が一番好きなんだよ。
■T 響きますね。
■O それしかないじゃないですか。
■T でも、それが答えなんだろうな。
■O シンプルでいいんですよ。人も車も。
■T うちに来たお客さんが、置いてあるギター弾いたりとか、置いてあるボンゴ叩いたりとかするだけで、ちょっと雰囲気が良くなったりするんですよね。
■O なんだろ、お客さんが弾いたり、叩いたりってのがいいんだよね。
■T お客さんの楽器の音で、その人と時間の共有できてるっていうのも嬉しいし、その弾く曲とかで、違う一面が見えたりするんですよね。
■O もっと、いろいろな楽器置いておけば、お客さんがセッションしたりして、面白いかもしれないですよ。
■T その横で、ゴルフ2のエンジン音もしてて。
■O それはきっと、良い感じのグルーヴができますよ。
■T いいですね。それは面白そう。うちも忘年会だけじゃなくて、ライブやったりとか、そういう機会をもうちょっとつくりたいですよね。
■O よし、またライブやろう。
■T やりたいですね。
■O DJタイムありで。
■T もちろん。でも、昔DJとしてプロで喰っていきたいと思った時に、見えなかった事が今はすごく見えているので、今の自分がDJやったら、もう少し気楽にやれるんじゃないかなって。
■O その気楽さって大事なんだよね。
■T それがね、なんで二十代前半の時には、わからなかったんだろって思うんですけど。わかる訳ないんですよね。
■O わかんないよね。俺もわからなかったもん。気楽に楽しんでやってる時って、すげ~いいもん。
■T そうですね。あいつに勝ちたいとか、あいつより良いタイム出してやろうとか思って、サーキット走っているときは、絶対空回りしますからね。自分がすごく楽しくて、なおかつ楽しく車と走れてて、車と路面が更に仲良くこうグリップしてる感じみたいなものが調和してる時って、やっぱいいタイムが出たりとか、それによって結果的に勝っちゃったりするんですよ。
■O まさにライブじゃないですか。
■T ああ、そうですね。まさにライブですね。走る度ごとに違いますからね。そういうシンクロしてる瞬間で、ものすごく良いタイムとか、レースで勝てるわけない車で勝っちゃったりすると、良い思い出になりますよね。あれを再現しようと思って走っても、なかなか再現できないですよ。
■O それが、良いライブです。
■T っでそれを、車載ビデオで見ても、その時のシンクロ感は見た所でわかんない。
■O わかんないでしょ~。その場にいないと。
■T その場にいないとって事ですかね。
■O って事です。
■T まあ、結局ゴルフ2乗らなきゃ解んないんですよね。アーティストの良さも、ライブで聴かなきゃわかんないんですよね。そこら辺が、わかんない人にはわかんないんだけど、一歩踏み込むと良い世界があるんだよなあ。
■O まあ、人生はライブですよ。
■T 人生はライブですね。今日と同じ一日はないですからね。ここの一瞬、ここの一日。ああ、ここが自分の人生において、凄く重要な一瞬だったなって思える時に、その傍らにゴルフ2があれば、俺等の仕事は凄い成功だと思うんですよ。
■O 大勝じゃないですか。
■T 大勝ですよね。大井さんの考える職人冥利も、きっとそこにあるのかもしれませんね。
■O まっ、ライブ100本やったって、おんなじライブはないからね。
(END)
文章:Mr.AG 写真:小高 孝之
協力 キッチン村山
三軒茶屋の駅を降りて10分程、中里商店街の奥にあるキッチン村山。カウンター席のみの落ち着いた雰囲気のお店は、中に入ると自然と気持ちも和む。
店主の村山さんは、今回の放談相手の大井氏の高校の同級生でもある。飾らない人柄で、ユニークな会話の中に出てくる芯のある言葉が印象的であった。
イタリアンがベースの料理は、一品一品こだわりが感じられ、自家製生ハム、オムレツ、手作りパン等どれもおいしかった。店主が試行錯誤を重ね完成させた、季節メニューの冷やしナポリタンは、トマトの甘みとハーブの香りの中に、タバスコの酸味と辛味が効いていて、赤ワインにも良く合う一品だ。夏の長い夜に、好みの酒と、気の合うパートナーと共に、このお店でゆっくりとした時間を過ごすのもいいだろう。