2010/12/11
実は、奥能登にはもう2回も行ってしまっている。 自分自身驚いているし、あきれてもいる。 でも、オグラは半分遊びだからいいようなものの、そうではない人もいて・・・。

完成度を増したFGXの試乗を兼ねて、奥能登は二三味(にざみ)珈琲を初めて訪ねたのは、9月半ばの土曜日だ。 前日にスピニングガレージからFGXを引き取り、翌日の午前4時に東京をスタートした。

FGXは、これがあのみすぼらしかった’88年式のRVかと思うほど、クルマとしてはもちろん、フェイクとしての完成度も高めていた。 外観上、チョイ違和感を感じさせるのはボディ同色となっているドアミラーのみ。 前回の番外編でもお伝えしたが、室内は前後のシートとも、GXのもの(’88Ciも同じファブリックだったが)となって、古っぽさが色濃く出ていた。 サスペンションは、ノーマルのスプリングにビルシュタインのブラックショックが組み合わされて、当然、乗り心地にもほぼ不満なし。 FGXの雰囲気に合わせるべくセレクトした13インチのスチールホイールが、高速でシミーを感じさせはするものの、どうしようもなく不快というものでもなく、ロングランも可能な快適性を持っていた。 エアコンは効くし、至極快適。

事前の話ーー。 正直にいえば、実際に長距離を走ったらどうなってしまうのかは分からないというのが、スピニングガレージ・スタッフの不安だった。 なにしろ、元はいえば長い間放置されていたクルマである。 オグラも含めて、どこか途中で止まってしまうのではという心配があるにはあった。

そこで取られた処置というのが、二三味珈琲のゴルフ2を引き取りに行く(車検整備のため)その機会を捕まえて、それにFGXも同行する形を採るというものだ。 スピニングの田中さんが代車をキャリアカーに載せて行く予定になっていることから、FGXに万が一があった場合、代車を下ろしてFGXをキャリアカーに積むという算段。 FGX単独なら、8月でも行けないわけではなかったが、そういう深謀遠慮(?)があって、9月半ばになった。
 
 
 
 
 
 
 

なぜ、奥能登の二三味珈琲にFGXでいくのか? ひとつにはもちろん、FGX完成記念イベントとしてである。 オグラには、新車を購入したら、京都のいのだコーヒに行って、コーヒーだけを飲んで帰ってくるという習わしがある。 昔から続く新車購入記念イベントだ。 だが、FGXはある意味、新車を購入するよりよほど難しいという代物だ。 金を出せばいいというものではない。 そこには、かなりの情熱が必要だからだ。 だから、少し重みのある内容にして、というのはオーバーだが、すくなくともより距離が出る小旅行をしたいと思っていた。

もうひとつは、二三味珈琲そのものへの興味。 奥能登の日本海側の木ノ浦海岸に焙煎工場があって、それは二三味珈琲の代表である二三味葉子さんのおじいさんが残した小さな船小屋という。 葉子さんは念願のカフェも珠洲市飯田町にオープンさせていて、そのカフェで二三味珈琲の焙煎したコーヒーとオリジナルのケーキがいただけるようにもなっている。 名前が二三味というのも、珈琲の味わい深さを象徴するよう。 それに、葉子さんはスピニングのお客様。 つまり、ゴルフ2乗り。 スピニングのブログでその存在を知り、パソコンで検索してさらに情報を得たオグラは、思いっきり二三味珈琲に惹かれてしまい、ともあれ、一度は奥能登を訪ねなければと思っていたわけだ。

しかし、奥能登は遠かった。 いや、距離としては600㎞と少しで、それほどでもない。 が、高速道路を下りてからの一般道が延々と続いて、時間的にとても長く感じるのだ。 関越自動車道から上信越道、北陸道、少しだけ能越道を使って、後は一般道と有料道路。 東京を早朝4時にスタートして、目的地の珠洲市に到着したのは午後2時。 途中ご飯を食べたりの休憩があったとはいうものの、延々10時間にも及ぶ長距離ドライブだった。

この小旅行の水先案内人になってくれたのは、スピニングガレージの代表、田中延和さんである。 冒頭、オグラは半分遊びだからいいようなものの、そうではない人もいて、と記したが、もうお分かりだろう、そのそうではない人が誰あろう、田中さん。 彼は、「前に、取りに来ますからって約束したんで」というが、東京から奥能登の珠洲市まで、車検整備のためにクルマを引き取りに行くという自動車販売店、あるいは自動車整備工場がどれほどあるだろうか。 あったとしても、それはスーパーカーなど特殊なクルマを扱う販売店なり、工場なりだろう。 スピニングが扱っているクルマは、ゴルフ2。 有り体にいってしまえば、輸入車の中古車。 それも、高級車ではない。
 
 
 
 
 

ビックリするけれど、遠距離納車、引き取りというのは、田中さんには当然のことらしい。 ブログを見ていると、関西ぐらいは平気で、キャリアカーで納車、また引き取りなんてことをやっているらしいことが分かる。

思うに、田中さんには、もちろんビジネスということはあるが、ゴルフ2で人と繋がっていくことに喜びを感じているというか、そうしていくことでゴルフ2のポジショニングをキープ、さらには高めて行くことに意義を見い出しているようなところがある。 おそらく、田中さんにとって、ゴルフ2はただのクルマではないのだろう。 一応、“生活の糧”とはいえるが、それだけではないなにか、たとえば思い入れ(いい意味での)といったようなものに突き動かされて活動を展開しているような気がする。 そのファッショナブルな装いと滑舌のよさで、趣味の延長といった軽いノリでゴルフ2専門店をやっているように見えてしまうだろうが、決してそうではない。

二度目の奥能登、二三味珈琲訪問は、この11月の半ば。 車検整備が終わって、田中さんが納車に行くというので、これをチャンスにオグラも再びFGXでの小旅行を試みることにしたもの。 前回、カフェではコーヒーだけを飲んで帰ってきた。 美味と評判の、オリジナルのケーキを忘れてしまっていた。 だから、2度目は、コーヒーとケーキを合わせて味わわせていただくというのが目的だ。

理由にならない理由だが、FGXのドアミラーがオリジナルに戻ったことも、奥能登に行く理由。 フェイクとしての完成度が高まったということで、それはそれで気分のいいことだったからだ。 これは、大阪・堺のレカロ専門店、フリースタイル(Tel=072-350-0010)の代表である豊嶋(とよしま)さんから譲ってもらったもの。 実は豊嶋さんも、“ゴルフ2大好き人間”。 前回、奥能登からそのままFGXで関西に回った時、フリースタイルに寄ると、豊嶋さんはFGXに大いに興味を持ってくれて、いずれなにかに使えるだろうと長くキープしていたドアミラーの譲渡を申し出てくれたのである。

今度の奥能登行きは、田中さんとは別行動で、二三味カフェで落ち合うことになっていた。 この時までにゴルフカップの走行会に参加する(!)など、FGXはすでに十二分というべき信頼性を示していて、長距離も独り立ちできるとの判断からだった。 実際、走りに関してはまったく問題はなかったのだが、ヒーターが全然効かないのにはマイッタ。 サーモスタットが開きっ放しになっているようで、水温がほとんど上がってくれなかったのだ。 9月と違って、11月ともなれば、気温は低い。 オグラはジャケットを着込んで、運転する羽目に陥ったのである。 それだけのことだが。

もちろん、今回、二三味カフェでは、コーヒーとケーキを合わせていただいた。 いうまでもなく、それらは美味。 味覚に関しての表現力が乏しいことに、オグラがもどかしさを覚えるぐらいのものだといえば、どれほどのものか分かっていただけるだろうか。

そして、木ノ浦海岸では、田中さんの納車に立ち会った。 元船小屋の焙煎工場から出てきた二三味葉子さんは、久しぶりに会う愛車を愛おしげに見る。 そう、それはまるで長く離れていた愛犬との再会を果たしたというような感じだった……。

FGXで二度の奥能登、二三味珈琲訪問を終えて、オグラが考え始めたのは、奥能登と二三味珈琲のコーヒー、それにFGXにはあるひとつの共通点があるのではないかということだ。 それは、癒し。 ヒーリング効果である。

オグラが訪ねた日の奥能登、木ノ浦海岸はともに穏やかで、その小さな湾は美しく落ち着いた佇まい。 しばらく、その景色を眺めていると、なぜか心が洗われるような気がしてくる。 加えて、二三味珈琲のコーヒーは、スッキリとして、しかし味わい深い。 この二三味カフェでのコーヒータイムは、まさに憩いの時といえるのだ。 FGXはといえば、そのライト旧車という雰囲気が、ドライバーだけではなく、周囲の人達に和やかな、温もりのある空気感をもたらす。

どうやら、FGXをサポーテッド・バイ・スピニングガレージで作ったことは、無駄ではなかったようだ。 むしろ、これからの世の中を考えると、FGXのような存在はとても重要になってくように思える。きっと大事になってくると思う。

小倉正樹

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